この百合小説がすごい!2021

 

 2020年を振り返り、 独断と偏見で選んだおすすめの百合小説を、ランキング形式でご紹介します。 対象作品は、ノベライズ、復刊、短編を除く20年中に発表された新作、または1巻が発行されたシリーズ作品、日本国内で翻訳出版された作品です。まだ2回目ですが、前回の記事をご覧いただいた方々やこれからご覧いただく方、2020年も素敵な作品に出合わせてくれた先生方にささやかな感謝を込めてお送りいたします。

 ※てっとり早くどんな作品がリストアップされているか確認されたい方は、末尾に目次があるので、そちらをご確認ください。

 

 

 

 

第40位 トリコロールをさがして/戸森しるこ
トリコロールをさがして (ポプラ物語館 80)

トリコロールをさがして (ポプラ物語館 80)

 

  女性教諭に惹かれる女子中学生の一筋縄ではいかない複雑な感情を描き出した『理科準備室のヴィーナス』が印象的な戸森しるこ先生の小学生の女の子を主人公にした作品です。  

 4年生の真青まおは、幼馴染の真姫が大好き。けれど、その真姫が最近あまり遊んでくれなくなったことに不満を持っています。6年生の真姫とは交友関係も違ってくるし、真青は真姫の「個性的なものが好き」という価値観や、おしゃれに興味を持っていることも理解できずにいて、真姫が変わっていくことを寂しく感じます。

 そんな真青が、周囲の人間との関りを通して、ともに傷つかないための適切な距離感をつかみ、真姫との新しい関係を受け入れていくまでが描かれています。
 
 
 
第39位 ハジメテヒラク/こまつあやこ
ハジメテヒラク

ハジメテヒラク

 

【あらすじ】頭の中で実況することが趣味の女の子・綿野あみ。中学に入ったばかりのあみは、従妹の早月から貰ったお守り代りの双眼鏡を、生活指導の先生に取り上げられそうになり、生け花部の部長・城に助けられる。かわりに、新入部員が入らないと来年には廃部になってしまうという生け花部に勧誘されて、勢いのまま入部したあみ。しかし、あみを含めてもたった四人しかいない部員は、てんでバラバラでまとまりがない。そんな折、お世話になっていた花屋が閉店することになり、投票で決まる文化祭の賞に入賞することで、恩を返そうと意気込む城の熱意に押されて、あみは、作品を展示するだけでなく、観客の前で生ける生け花ショーを思いつき、その実況役に名乗りでる。

 

 あみには「ヒーロー」がいます。競馬の実況アナウンサーを目指す従妹の早月です。小学生の時、友達の恋を応援しようと思って失敗し、クラスで無視されていたあみに、早月は輪の外からクラスの実況をするという提案をし、それが孤立していた間のあみの心の支えになったのでした。以来、夢が叶ったら連絡するというメモを残していった早月との再会を待ち望んでいます。

 早月の“実況するってことは、その馬や人を知るってこと”という教えに導かれるようにして、部長にたてついたりして怖そうに思えたカオ先輩や、同じ一年の女子同士、仲良くしたいと思って話しかけても、なぜかそっけない九島、彼女たちの見えなかった一面に触れて、親密になっていく過程も読みどころのひとつ。

 ほんの半世紀前まで、女性が騎乗することさえ許されなかった競馬界。たまたま誘われた競馬観戦で、女性騎手を見かけたことから、アナウンサーを目指した早月。アナウンサーになることを両親に反対されて、あみの家に転がり込んできた早月に、あみの父親は、“実況ってふつう男性がやるもんだろ”と驚きます。名も知れぬ女性ジョッキーから早月へ、早月からあみへと、女性たちの連帯が、作品の背後にひっそりと息づいているのを感じます。

 

 

 

第38位 白百合さんかく語りき。/今田ひよこ
白百合さんかく語りき。 (電撃文庫)

白百合さんかく語りき。 (電撃文庫)

 

 

 内弁慶な永遠と社交的なリリは『カップル厨』の同志。ふたりで、目についたカップルを観察したり、お題を出しあって妄想したりの毎日を送っています。永遠とリリの繰り広げるカップリング妄想、リリが、持前の社交力と妄想で培った恋愛能力(?)を活かして、放課後に開いている恋愛相談室にまつわる騒動を描いたコメディです。

 リリは密かに永遠のことが好きなのですが、永遠といえばリリの気持ちにはまったく気づいてないくせに、リリをイジるのは大好き。そんな永遠に毎度振り回されてしまうリリ。ギャグ色強めで、ときとしてカオスでシュールな作品ですが、キュンとくるようなシーンもちょっぴりあります。

 

 

 

第37位 ミスエデュケーション/エミリー・M・ダンフォース
ミスエデュケーション

ミスエデュケーション

 

 

 同タイトルで映画化もされた、保守的なアメリカの田舎町に生まれたレズビアンの少女を主人公にした青春小説です。クラウドファウンディングを活用して、世界の本を翻訳出版するサウザンブックスの一冊として日本でも刊行されました。

  なにかと張り合っていた悪友の女の子とはじめてキスした12歳の夏。翌日、交通事故で両親を亡くしたことで罪の意識を感じ芽生えた気持ちに蓋をしてしまった初恋。競泳のライバルとのひと夏限りの情熱的な関係と、その後も続く友情。そして、ハイスクールで出会ったコーリーに恋したキャメロン。恋心を秘めつつも、コーリーの親友として振舞うキャメロンですが、ふたりの気持ちが通じたかのように思えた直後、キャメロンがレズビアンであると知った叔母に、同性愛者矯正施設に入れられてしまいます。

 後半部では、その施設での生活が描かれます。幸いにも、二人の素敵な仲間を得て、過酷な経験を乗り越えていく姿が描かれます。

 

 

 

第36位 少女と猫とお人好しダークエルフの魔石工房/江本マシメサ

 

 2015年のデビュー以来、「小説家になろう」連載した作品が多数書籍化されている江本マシメサ先生。近年では書下ろし作品も増え、ライト文芸の人気作家のひとりである先生の精霊たちに愛される人間の少女とダークエルフの女性を主人公にしたファンタジーです。
 12歳の少女・エルは、辺境の森で、唯一の隣人である老齢の魔法使いの元に身を寄せながら、出稼ぎに行ったまま帰ってこない父親を待ち続けていました。しかし、魔法使いの老人も帰らぬ人となり、エルは一緒に暮らしていた猫妖精のヨヨとともに、父親を捜すために王都を目指します。苦労して王都に辿り着いたものの、早々にトラブルに巻き込まれたエルは、ダークエルフの美女イングリットに助けられます。その縁で共同生活を送ることになったふたり。
 イングリッドは、魔力を付与した魔石を動力源にした製品の開発を生業としていて、非凡な発明家でもありましたが、開発した製品の権利を騙し取られたり、ダークエルフに向けられる人間たちの偏見のせいで不遇をかこっていました。老魔術師によって鍛えられ、良質の魔石をつくる技術を持ったエルは、イングリッドの研究の行き詰まりを打破するきっかけとなり、仕事上のパートナーとして欠かせない存在になります。
 普段の生活では、しっかり者のエルが、ずぼらなイングリッドをお世話する側になっていますが、父親を捜していくうちに次々と明らかになっていく自身の出生にまつわる過酷な真実に直面するエルにそっと寄り添い、ときには身を挺して危険から守ろうとするイングリッドとは、固い信頼と愛情で結ばれていきます。
 「小説家になろう」で連載された本編は完結済。現在、書籍版はイングリッドの努力が報われる2巻までが刊行。ふたりの魔術工房を持つことを目指して、苦難の道のりをふたりと精霊たちで支え合って歩んでいく続刊の刊行が待ち望まれます。
 
 
 
第35位 お庭番デイズ 逢沢学園女子寮日記/有沢佳映
お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 上

お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 上

 
お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 下

お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 下

 

 

 寡作ながら高い評価を得ている児童文学作家・有沢佳映ありさわかえ先生の7年ぶりの新刊は、中高一貫の共学校の女子寮を舞台にした作品です。「人が人を助ける」というモットーを掲げる女子寮では、寮生たちが手分けして学園のトラブルに対処するという伝統があり、そのための情報収集を担当する通称お庭番と呼ばれる役目がありました。お庭番に指名された一年生、お調子者のアスが、同室の美少女で頭もいいけど中身は小学生男子のような郁名ゆきな、ボーイッシュな見た目だけどおとなしくて心優しい恭緒たかおとともに、ときおり人間関係に頭を悩ませたりしつつ、事件に体当たりしていく様が描かれます。
 その三人を取り囲む個性豊かな寮生たちが描かれているところも本書の魅力。的確な采配でトラブルを解決に導いていく頼れる寮長と、息の合ったところを見せるクールビューティーな副寮長、いつでも明るく突拍子のない行動で呆れさせつつも、エンターテイナーぶりを発揮して皆を沸かせる三バカ先輩たち、「不機嫌姫」とも呼ばれる迫力のある美貌で寮生たちから畏れられ、辛辣ながらも情にも厚くみんなから愛されているピアノの特別生のイライザ先輩、空気を読まない発言で場の雰囲気を凍りつかせる失言クイーンのオフ子先輩(あだ名の由来まで面白い)、寮生たちから敬われているちょっとシャイな幽霊のレイコ先輩などなど、彼女たちと三人の過ごす寮生活は、本当に楽しそうです。
 アスたちがお庭番に任命される二学期からクリスマス会までが描かれ、幕を閉じますが、相当に濃い4か月間を体験した頃には、きっと、本を閉じるのが惜しくなっているはずです。
 
 
 
第34位 愛されなくても別に/武田綾乃
愛されなくても別に

愛されなくても別に

  • 作者:武田 綾乃
  • 発売日: 2020/08/26
  • メディア: 単行本
 
 『響け!ユーフォニアム』シリーズや『君と漕ぐ』シリーズでおなじみの武田綾乃先生による『小説現代』2020年8月号に一挙掲載された家族神話に切り込んだ長編作品です。
 浪費癖があり、家事もまったくやろうとしない母親の面倒を見るためにバイト漬けの日々を送る大学生の宮田。鬱屈した思いを抱えつつも、女手ひとつで育ててくれた母親を見捨てることができずにいた宮田ですが、次々と母親の嘘が発覚し、とっておいた奨学金にも手を出されたことを知り宮田は家を飛び出します。行く当てのない宮田は同じバイト先に勤める同級生の江永に誘われて、彼女の部屋に間借りすることになります。元はと言えば、江永の派手な外見に気後れして避けていた宮田ですが、江永の父親が殺人犯だという噂を耳にして声をかけ、「不幸な人に興味がある」と率直に言った宮田を、なぜか江永は気に入ったようで、それ以来、度々、言葉を交わす仲になっていたのでした。血縁関係に悩まされたことがあるという共通点以外接点もなく、それがなければおそらく近づくこともなかっただろうふたりですが、ともに過ごしていくうちに、宮田が自身を縛り付けていた家族の愛情と訣別し歩み出していく姿を描いています。辛酸を舐めさせられてきたふたりに訪れた小さな奇跡が希望を感じさせてくれる作品です。
 
 
 
第33位 婦好戦記 最強の女将軍と最弱の巫女軍師/佳穂一二三
婦好戦記―最強の女将軍と最弱の巫女軍師― 一 (ヒストリアノベルズ)

婦好戦記―最強の女将軍と最弱の巫女軍師― 一 (ヒストリアノベルズ)

  • 作者:佳穂一二三
  • 発売日: 2020/02/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  「小説家になろう」にて連載、2019年から刊行を開始した歴史小説専門の新文芸レーベル、ヒストリアノベルズの一冊として刊行された佳穂一二三かほひふみ先生のデビュー作。実在が確認されている中国最古の王朝・殷の時代を舞台に据えた歴史小説です。

 門外不出の禁忌である文字を覚えたサクは、罰として王妃・婦好の率いる女性だけで構成された軍に配属されます。婦好の在り方に魅せられたサクが才覚を認められ、数々の試練を経て婦好を支える軍師として成長していきます。
 サクは殺生を嫌い、動物さえ傷つけるのを厭う心根の持ち主ですが、婦好との出会いは、サクに婦好との仲をやっかんで虐めてくる同僚にも、同盟軍の軍師から命を懸けた勝負を挑まれても、一歩も退かない勇気をもたらします。それだけ、サクにとって婦好は大きな存在であり、婦好もまた異質な発想をするサクに特別に目をかけるようになっていきます。
 婦好の軍の先頭に立って男たちと互角に斬りあう力と非情に徹して戦に臨む覚悟、サクの知恵と失われていく命を惜しむ優しさが、女性たちをエンパワメントしていくふたりの覇道の行方を見届けたくなります。
 
 
 
第32位 地球さんはレベルアップしました!/生咲日月

 【あらすじ】ある日、世界中に響く「地球さんはレベルアップしました!」という声とともに、世界各地にダンジョンが出現。十五歳の少女、羊谷命子は生成されたダンジョンに巻き込まれてしまうが、人類ではじめてのダンジョンからの生還者となる。

 
 <小説家になろう>発の生咲日月いくざきかずき先生のデビュー作。地球が喋り、ダンジョンが出現する、突然、ファンタジー化した世界に社会が混乱するなか、4人の女の子たちが人類の先頭を切って、ダンジョン制覇に挑んでいく痛快なストーリー。
 4人の中心となる羊谷命子ひつじやめいこ))はゲームが好きな溌溂とした少女。本物のダンジョンの出現にも欣喜雀躍、いちはやくファンタジー化した世界に順応していきます。ちょっと目立ちたがり屋なところもあるけれど、地道に研究と鍛錬を重ねる姿は真剣。周囲の人間も感化していき、リーダーシップを発揮していきます。命子の一つ下の幼馴染の有鴨紫蓮ありかもしれんは、命子以上にファンタジー世界に耽溺し、中二病キャラを演じてるけど、素は人見知り。大好きな命子の後を付いていきます。さらに、生真面目で人目を惹く容貌ながら、口下手なために親友といえる存在のいなかった笹笠ささがさささらと、ヨーロッパの小国からやってきた忍者に憧れる陽気なながれルル、命子のふたりの同級生が加わります。仲睦まじい彼女たちが、なりたい自分に近づきつつ、和気藹々とダンジョンを攻略していきます。
 
 
 
第31位 キャンドル/村上正郁
キャンドル (フレーベル館 文学の森)

キャンドル (フレーベル館 文学の森)

 

  前回、取り上げさせていただいたデビュー作『あの子の秘密』に続く村上正郁むらかみまさふみ先生の第二作です。母親を亡くして以来、諦念を抱え無気力に過ごす少年と、その親友で、一見すると美少女なガキ大将の少年との友情を軸に置いた作品でもあり、実は王道の百合小説でもあります。どのようにそれらが繋がっていくのか、予断なく語りの魔術を堪能していただきたい作品です。大切な人を失ってから後悔しないために喪失の痛みと向き合っていく素敵な物語でした。

 

 

 

 

第30位 魔女の愛し仔/綾里けいし
魔女の愛し仔 (星海社FICTIONS)

魔女の愛し仔 (星海社FICTIONS)

 

  『B.A.D.(Beyond Another Darkness)』シリーズや『異世界拷問姫』シリーズなど、ダークなファンタシーを得意とするライトノベル作家綾里けいし先生の新作は、人間の娘を愛した魔女と、魔女を愛した人間の娘の物語です。

 古き魔女エンゲル・ヘクセンナハト(エル)は、本来の終わり方とは別の結末を迎えてしまった『幸福になれなかった物語』が放つ呪いを封じるため、それらを管理、保存する役目を負っています。エルの愛し仔であり、弟子であるサラは、『幸福になれなかった物語』が異なる道筋を辿ることになった原因を取り除き、新しい解釈を施すことで物語を幸せに導き、呪いを鎮めようと物語世界に飛び込んでいきます。『白雪姫』や『人魚姫』など有名なおとぎ話を題材に、物語の中で、いったい誰が、何のために、どうやって、物語の結末を書き換えてしまったのかをサラとエルが探っていく、ファンタシーとミステリを両立させた意欲作です。
 幕間に挟まれた断章では、エルとサラの物語が紡がれていきます。人々から奴隷のような扱いをされてきたあげく、生贄として差し出されたサラに、はじめて優しく一人の人間として接してくれたエル。それでいて、どこか一線を引いていたエルが、ともに過ごしていくうちに、サラに深い愛情を抱いていく過程が描かれます。しかし、次第に、愛し仔の真実、サラとエルの置かれた過酷な境遇が明らかになっていきます。それでも、人と魔女では幸せになれない――世界の定めた運命に抗おうとするサラの決意と覚悟に胸を揺さぶられます。
 
 
 
第29位 異世界に咲くは百合の花/蛙田アメコ
異世界に咲くは百合の花 (GL文庫)

異世界に咲くは百合の花 (GL文庫)

 

  前年は『女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました』を取り上げた蛙田アメコ先生。11月には一部、原作・脚本を担当した朗読百合劇も開催され、新たな取り組みもされていた蛙田先生の<小説家になろう>で連載されていた作品が、電子書籍百合専門レーベルGL文庫の一冊としてまとまりました。乙女ゲーム世界を舞台にメインヒロインと悪役令嬢の恋を描いたファンタジーです。

 
 推しの悪役令嬢フウカが登場するゲーム世界にメインヒロインに転生したミヤコは、晴れて婚約破棄をもぎ取り、シナリオ通りなら非業の死を遂げるはずのフウカの元に駆け付けます。フウカとふたりきりのスローライフを満喫しようとするミヤコに、フウカは、二週間以内に「幸せだ」と言わせるということを条件に、ミヤコの提案を受け入れます。
 そうして始まったふたりのささやかな生活のなかで、推しを救いたいという一心で行動していたミヤコが、フウカを改めて一人の女性として意識したり、本当は努力家で無私の人であるフウカを間近で感じて、フウカを救いたいという決意を深めていきます。
 気の抜けない貴族の世界で生きてきたフウカにとっては、ミヤコとの暮らしははじめての体験づくし。それまで結果だけを求められ、誰にも努力する姿を認められることのなかったフウカは、努力によって得た成果を活用し人の役に立つことの喜び、人々から感謝される温かみを知っていき、ミヤコにも心を開いていきます。しかし、それゆえにミヤコを自分の運命に巻き込みたくないと葛藤します。
 そんなふたりに訪れる危機。ふたりを見守る人たちにもそっと背を押されながら、試練に立ち向かっていく、ほんとは誰よりも頑張り屋の報われない悪役令嬢と、誰よりも悪役令嬢を愛するメインヒロインの激動の14日間を描いた作品です。
 
 
 
第28位 ババヤガの夜/王谷晶
ババヤガの夜

ババヤガの夜

  • 作者:王谷晶
  • 発売日: 2020/10/22
  • メディア: 単行本
 

  文芸誌『文藝2020年秋号』(河出書房)の「覚醒するシスターフッド特集」の目玉として発表された作品です。王谷晶おうたにあきら先生といえば、多種多様な女性同士の関係を描いた短編集『完璧じゃない、あたしたち』が印象に残るところ。この作品でも一言では言い表しがたい女性同士の関係性が描かれています。

 
 唯一の趣味といえる暴力ー純粋な力のぶつけあいにしか関心を持たない新藤依子は、ヤクザとの戦いに敗れ連れていかれた先で、組長の一人娘の護衛をすることになります。新藤が護衛に就くことになった尚子は、父親や男たちの前では感情を表さない人形じみた美少女でしたが、新藤に対してだけは、最初から感情も露わに挑発的な態度を取ります。しかし、次第に、来るべき許嫁との結婚後の家庭での在り方、理想の母親像など、ひどく古風な価値観を大真面目に説いていた尚子が、父親の思う女らしさにがんじがらめにされた籠の鳥であることが分かってくると、あるべき女性像とはかけ離れた新藤に対する尚子の心境の複雑さがおぼろげに浮かび上がってきます。暴力の世界に身を浸してきた新藤にとっても尚子は理解の外であり、はじめは尚子の態度を軽く受け流していた新藤も、尚子の抱える苦しみに気づきはじめ、ある事件をきっかけに、ふたりは結びつきを強めていきます。
 なんの共通点もなく友人でも恋人でもないふたりが一蓮托生の間柄になり、押し付けられた女らしさと、それを強要するヤクザ――男社会に対して立ち向かっていく。その戦いは「あいつらに殺されてたまるか」という気概に満ちていて、胸のすく思いでした。
 
 
 
第27位 さいはての終末ガールズパッカー/藻野多摩夫
さいはての終末ガールズパッカー (電撃文庫)

さいはての終末ガールズパッカー (電撃文庫)

 

  2017年に第23回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作『オリンポスの郵便ポスト』でデビューされた藻野多摩夫ものたまお先生の最新作。遥か未来、太陽が衰退して寒冷化が進み、人類も滅亡寸前という世界を舞台に、ふたりの少女の旅路を描いた作品です。

 7歳のとき、母親を亡くした際に、レミが掘り起こした2000年前に作られた自動人形《オートマタ》の少女リーナ。左腕は既に動かず、記憶も無くして行き場所のないリーナを受け入れてくれたレミ。その後、祖父も亡くし、天涯孤独となったレミの成長を見守ってきたリーナ。誰にも頼ることのできない環境で、互いの生きる希望でもあったふたり。大きくなったらリーナを治すというレミの抱いた夢を果たすため、かつて耳にした東の果てにあるという《楽園》を目指します。短くなっていくリーナの稼働時間、《楽園》の真実、ふたりを引き裂こうとする過酷な現実に直面しながらも、諦めず残された日々を支え合って懸命に生きていこうとする姿が感動を呼ぶ作品です。
 
 
 
第26位 寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖/倉本由布

  80年代後半のコバルト文庫の最盛期から、同文庫で活躍されていた倉本由布先生。90年代以降は時代もので人気を博し、2016年には初めて一般向けの時代小説シリーズ『むすめ髪結い夢暦』を発表。武家の娘から女髪結いになった主人公・卯野が、出会った女性たちの恋や、時には事件に関わっていくのを描いた作品で、嫁と姑、母娘や姉妹、幼馴染、女性同士で思いやって生きていく姿も濃やかに描かれていました。本作は、武士の娘と町人の娘という身分を超えて、深く結びついたふたりの少女を主人公に据えた時代ミステリ連作集です。

 15歳の札差の娘・薫と、同い年の代々同心を務める内藤家の娘・芽衣。薫は駆け出しの同心である芽衣の兄・三四郎の岡っ引きで、芽衣は薫を補佐する下っ引き。薫はとびきりの美人ですが、微笑むことすら滅多にない不愛想な人柄で、芽衣は人好きのする気だてのよい娘。無残な死体を見ても顔色一つ変えない薫は、謎解きは得意ですが、聞き込みとなると、人当たりよく気遣いのできる芽衣の方が、警戒されずに話を聞き出せる場面もあり、犯罪捜査の相方としても、相性の良さを発揮しています。
 芽衣に何かあろうものなら、事件が起きていようと、風邪で寝込んでいようと即座に駆け付ける薫。謎解きと芽衣のこと以外にはまるで無関心で、身の回りのことには無頓着な薫を、いつでも気にかけている芽衣。言葉少ない薫も、芽衣を大切に思う気持ちは包み隠さず伝え、芽衣の方は嬉しそうにしながらも自然に受け止めていて、深い信頼で結びついていることが伝わってきます。その仲睦まじさは、芽衣の兄・三四郎をやきもきさせ、薫の異母妹が嫉妬するほど。
 この巻の最終話では、5年前に遡り、薫と芽衣の馴れ初め、そして深く結びつくようになるきっかけとなった出来事が描かれています。お金には不自由しないはずの薫が、なぜ岡っ引きとしてお駄賃をもらうことに固執するのか、そして、薫の抱く夢も明かされます。その夢をふたりで叶えられる日がやって来るのか、続きが楽しみです。
 
 
 
第25位 夜の向こうの蛹たち/近藤史恵
夜の向こうの蛹たち

夜の向こうの蛹たち

  • 作者:近藤史恵
  • 発売日: 2020/06/11
  • メディア: 単行本
 

  近藤史恵先生の百合小説といえば、全寮制の高校に入った女生徒が憧れていた先輩の死の真相を探るミステリー『あなたに贈るX(キス)』が印象に残るところ。やるせない真相がせつない作品でした。『ダークルーム』所収の短編「北緯六十度の恋」も女性どうしの恋愛とミステリではおなじみの要素を掛け合わせた秀作でした。また、『インフルエンス』では性暴力に抗うために犯した罪で繋がる三人の女性の関係を通して描かれる女性たちの連帯が印象的でした。『茨姫はたたかう』に始まる整体師探偵のシリーズでは、現代女性の生きづらさが浮き彫りにされていましたが、今回の作品では、容姿で人を差別するルッキズムがテーマの一つであり、作中の三人の女性の関係にも影を落としています。

 織部妙はレズビアンの小説家で、優れた容姿ゆえに、そのことに無遠慮に触れられるのを嫌っています。織部は、ある日、“美人作家”と評判の新人、橋本さなぎの作品を読み、その才能に圧倒されます。しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の人当たりのいい親切な対応に、かえって幻滅してしまいます。かわりに、織部の目を奪ったのは、橋本の秘書・初芝祐でした。彼女に一目で恋というより欲望と名付けるのがふさわしいほどの激しい感情を抱きます。けれど、恋愛経験も重ね、決して奥手とも思えない織部は、初芝に対する気持ちをもてあまし、積極的にアプローチすることもできずにいます。それでも橋本と初芝が決して良好な関係ではないことを知った織部初芝に目をかけ関わっていくうちに、やがて、橋本と初芝の抱えた秘密に気づきます。それによって橋本も交えた三人の関係は複雑にもつれ合っていきます。ルッキズムのもたらす苦しみと、それからの解放、そして、ままならない恋の痛みを描いた苦味の効いた恋愛小説でした。
 
 
 
第24位 ポラリスが降り注ぐ夜/李琴峰
ポラリスが降り注ぐ夜

ポラリスが降り注ぐ夜

 

  デビュー以来、一貫して言語やレズビアンをテーマにして書かれている李琴峰りことみ先生の三冊目の著作である本書は、新宿二丁目のバー「ポラリス」ですれ違う、レズビアンアセクシャルトランスセクシャルなど様々なセクシュアリティの女性たち、それぞれの人生の一瞬を切り取った連作集です。今に生きるセクシャル・マイノリティの女性たちに寄り添って描かれた彼女たちの現実からは、セクシャル・マイノリティであるがゆえの苦しみと孤独がひしひしと伝わってきます。

 年内には、日本で知り合い恋人同士になった台湾出身の女性と、新疆しんきょう出身のウイグル族の女性の姿を描いた『星月夜』も発表されており、言語の壁や政治、セクシャル・マイノリティを取り巻く社会の状況が、惹かれあう者どうし寄り添い共に生きる、ただそれだけのことをどれだけ難しくしているかを、静かに訴えかけてくるかのような作品です。
 
 
 
第23位 百合ACT ~王子様なお姫様、お姫様な王子様~

 【あらすじ】幼い頃はおとなしい子だった渚にとって、幼馴染の風花は、意地悪な男子からも守ってくれる頼もしい女の子だった。しかし、風花は転校してしまい離れ離れになってしまう。時は過ぎ、風花を守れるような人間になろうと努力した結果、渚は通っている女子校では、王子様ともてはやされるまでになっていた。そこへ、転入生として現れた風花は、昔と見違えるように、おしとやかな女の子になっていた。互いに、昔のイメージとは違う相手の姿に戸惑いながらも、恋人として付きあいだしたふたりだけれど……

 
 官能小説専門レーベルの二次元ドリーム文庫で、あらおし悠先生に次ぐ数の百合作品を手がけられている上田ながの先生の二年ぶりの百合作品です。
 高校で再会した幼馴染の渚と風花ふうか。学校ではお似合いの王子様とお姫様として祭り上げられているけれど、元々は真逆の性格をしていたふたり。本当に昔とは違うのかお互い本音を引き出そうとするけれど、ふたりとも本音を言えば相手のためにならないと思い込んでいて言うに言えない。とっくに両想いでお付き合いだってしてるのに、もっと深く繋がりたいという気持ちが生み出すもどかしさが絶妙のスパイスになっている官能百合でした。
 
 
 
第22位 こわれたせかいの むこうがわ/陸道烈夏

 第26回電撃小説大賞《銀賞》を受賞した陸道烈夏りくどうれっか先生のデビュー作。厳然たる階級間の差別が存在する独裁国家を舞台に、少女たちのサバイバルを描いた作品です。

 天涯孤独の少女フウは、禁制のラジオと小鳥のアサとともに、最下層民にとって過酷な世界を生き延びてきました。フウは、あるときカザクラという少女に出会います。フウのことをなぜか「おにーちゃん」と呼び、突拍子もない言動をするカザクラに警戒心を抱きつつも、家もなく行く当てもないというカザクラを放っておけず、一緒に暮らし始めたふたり。ところが、カザクラがある秘密を抱え、警察に追われる身であることを知り、この国にふたりが共にいられる場所はないと思い知らされるフウ。しかも、政府から国民に教えられてきた常識では、この地上に残った国家はただひとつとされ、周りを囲む砂漠には人を喰らう生物が出現し、生存に適さない環境であることは、フウも身をもって体験してきたこと。それでも、ラジオがもたらしてくれた知恵と、そこから生まれた微かな希望を胸に、政府のひた隠す真実に迫りつつ、追っ手を躱しながら、決死の脱出行に挑みます。フウが母親を亡くしてから抱えていた心の隙間に、いつの間に居座っていたカザクラ。軽口を叩きあいながら、絆を深めていくふたりの心情も繊細に描かれた、痛快無比の脱出劇です。
 第2巻では、奴隷商人の少女に目をつけられ、またしても陥った絶体絶命の窮地を潜り抜けていくフウの知略に魅せられ、互いに命を預け合うフウ達の結びつきの強さが感動的です。
 
 
 
第21位 ひきこまり吸血鬼の悶々/小林湖底
ひきこまり吸血姫の悶々 (GA文庫)

ひきこまり吸血姫の悶々 (GA文庫)

  • 作者:小林 湖底
  • 発売日: 2020/01/11
  • メディア: 文庫
 

 第11回GA文庫大賞「優秀賞」を受賞した小林湖底先生のデビュー作。

 ある条件下であれば殺されても生き返ることができるため、各国間の戦争が大衆の娯楽と化している世界。代々、帝国の将軍を輩出してきた名門貴族の家系に生まれたテラコマリ。しかし、吸血鬼なのに血が飲めないため魔法も使えず、エリート街道から外れ、ひきこもって暮らしていたら、突然、将軍に抜擢されてしまいます。戦争に明け暮れる荒くれ者たちを率いることになり、殺伐とした日常に放り込まれてしまったコマリ。血の気の多い部下には首を狙われるし、腹心のはずの専属メイド、ヴィルはコマリ好きを拗らせたおかしな言動を繰り返し、ふだんのコマリのことを知っているくせに、あろうことか周囲を煽るような発言ばかり。弱いとバレたら、いつ下剋上されるか分からないため、虚勢を張って大言壮語しつつも、内心、頭を抱えるコマリが、ハッタリと運だけで乗り切っていく抱腹絶倒のストーリー。
 やりたくもない将軍職をやらされているけれど、コマリ自身、小説家になりたいという夢を持っているだけあって、(平和な)夢を持っている女の子には甘く、
そんな女の子たちの願いを踏みにじろうとする輩には、とうてい歯が立たないと思っていても立ち向かっていく勇気を持った、本当は凄い女の子が出会った女の子たちを助けていく百合ファンタジーです。
 
 
 
第20位 QK部/黄黒真直
QK部 トランプゲーム部の結成と挑戦

QK部 トランプゲーム部の結成と挑戦

  • 作者:黄黒 真直
  • 発売日: 2020/03/09
  • メディア: 単行本
 
 投稿サイト「カクヨム」発の黄黒真直きぐろまさなお先生のデビュー作品。
 高校に入学した古井丸こいまるみぞれと倉藤津々実くらふじつつみは、中学以来の親友。いっしょに家庭科部に入る約束をしていたふたりですが、「素数大富豪」「QK(1213)部」と書かれた謎のポスターを発見。興味を惹かれたみぞれは、指定されていた教室を訪れます。そこで迎えてくれたのは、一年先輩の部長・宝崎伊緒菜ほうざきいおな。手札から素数だけを場に出すことができる素数大富豪に魅せられたみぞれは、QK部への入部を決意。津々実は、いつも津々実の後を付いてくるような子だったみぞれの闘志を見せられて、知らなかった一面にショックを受けながらも、快く送り出してくれます。
 しかし、入部早々、部員が伊緒菜しかいないQK部には廃止の危機が訪れます。偶然、みぞれは、同じ一年生の剣持慧が数学に強いことを知って、勧誘しますが、女の子が数学をできてもいいことはないと経験から思い込んでいた慧は、数学に強いことを隠していて、慧との交渉は難航します。しかし、みぞれたちの熱意に思うところがあった慧の入部も決まり、こうしてQK部の全国大会へ向けた活動が始まります。
 その後のライバルたちの登場、対戦を経て、伊緒菜が“おねえちゃん”と呼ぶライバルとの試合の回想が描かれます。頭脳バトルの面白さと、女の子たちが見せる友情、対抗心を燃やす姿が熱い作品です。
 「カクヨム」の連載はまだ続いており、続刊が待たれます。
 
 
 
第19位 百合保健室 失恋少女の癒やし方/あらおし悠
 
 官能百合小説をコンスタントに書き続け、12月上旬発行の『コミックヴァルキリーWeb版vol.91』から、初のコミカライズとなる『百合ラブスレイブ わたしだけの委員長』の連載も始まったあらおし悠先生。
 失恋して泣いていた見知らぬ女の子を、一度きりのつもりで体で慰めてあげた養護教諭白城樹里しらきじゅり。ところが、相手は新しい赴任先である女子校の生徒、守本文乃もりもとふみのでした。再会した文乃は、失恋の痛みが癒えるまでといって関係の継続を求め、樹里は立場を気にしつつも渋々、要求を飲みます。
 かたや年上の社会人でいくつかの恋も経てきた樹里と、かたや内気で誰ともお付き合いしたこともない学生の文乃という組み合わせ。豊富な経験でベッドの上では、樹里がリードしつつも、ふだんは内気な文乃が時折みせる大胆なおねだりに翻弄される、ふたりの関係はちょっぴりコミカルで甘い雰囲気を漂わせています。
 あくまで失恋の痛みを慰めるだけの割り切った関係でいようとする樹里が、だんだん情熱を内に秘めた文乃に心動かされていき、せつなさも増していきます。再会した過去の恋人に背を押され、樹里が心の奥底にしまい込んでしまった自分の本当の願いに気づくシーンには心を揺さぶられました。
 『百合風の香る島』(2017年)以来の先生と生徒の恋を描いた作品ですが、それともまた違う関係性を描き出す、あらおし先生の引き出しの多さに脱帽する作品でした。ちなみに、年末に電子書籍のみで発行された『白き女神の邪教団 魔胎されし断罪シスター』は、これまでの作品と打って変わったハードでダークな内容となっていて、新境地に挑んでいます。
 
 
 
第18位 蒼百合館の夜明け/人間無骨
蒼百合館の夜明け (二次元ドリーム文庫)

蒼百合館の夜明け (二次元ドリーム文庫)

  • 作者:人間無骨
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 文庫
 

  個人出版で独自のこだわりを貫く官能百合を複数公開されてきた人間無骨にんげんむこつ先生の商業デビュー作です。

 進学塾に通う受験生の幸浦詩月は、母親からの抑圧と干渉に耐え切れず、塾をサボって、幽霊が出るという廃洋館を訪れます。そこで、年上の女性・光紗みさと出会い、詩月は悩みを受け止めてくれた光紗に惹かれます。まもなく誘われるがままに体を重ねて行きつつも、詩月は光紗に対する自身の想いを慎重に確かめていきます。しかし、想いが通じ合ったと思われた矢先に、光紗の様子に不審を抱いた詩月は、光紗の重大な秘密に触れてしまいます。結ばれようのない運命を前に、苦悩するふたりの激しく燃え上がる恋を描いた、究極の年の差百合と呼びたくなる作品です。

 年末にはさっそく商業作品の第二弾として『緋百合の絆』を刊行、官能描写の背徳性を増しつつも、人間と吸血鬼の主従の間に生まれていく絆をしっかりと描いた甲乙つけがたい作品でした。これからのご活躍に期待がかかります。
 
 
 
第17位 〆切前には百合が捗る/平坂読
〆切前には百合が捗る (GA文庫)

〆切前には百合が捗る (GA文庫)

  • 作者:平坂読
  • 発売日: 2020/12/10
  • メディア: 文庫
 

  アニメ化もされた『僕は友達が少ない』『妹さえいればいい。』などの著作がある人気ライトノベル作家平坂読ひらさかよみ先生。デビュー作の『ホーンテッド!』を始め『ソラにウサギがのぼるころ』『ラノベ部』と活動初期には百合要素を取り込んだ作品も多く、TRPGのリプレイ『グランクレスト・リプレイ ライブ・ファクトリー ニートな君主の竜退治』では、参加作家の中で一番熱心に百合プレイを主導していた先生が、レズビアンの少女を主人公にして、本格的に百合に取り組んだ作品です。

 
 高校生の白川結愛しらかわゆあは、レズビアンであることをカミングアウトしますが、無理解な周囲の人間たちに憤慨し、衝動的に家出します。結愛は、唯一、信頼できる従兄妹の編集者・白川京しらかわみやこを頼った結果、〆切破りの常習犯であるライトノベル作家海老かいろうヒカリこと海老原優佳理びわらゆかりの世話役兼監視役を任されることに。
 優佳理に一目惚れしてしまった結愛ですが、相手は一応は雇用主で行き場のない優佳理を受け入れてくれた恩人を困らせるわけにもいかず、ときおり、好きな人と一つ屋根の下というシチュエーションに煩悶しつつも、気持ちを隠して、健気に優佳理をお世話します。優佳理は、純朴で信じやすい結愛の反応が楽しくて、ついからかってみたり、〆切前になると、結愛を道連れに釣りやDIYなどに勤しんだり、そんなふたりの生活がメインに描かれています。
 しかし、一見すると人当たりのよい優佳理ですが、本来は人間関係に淡白で、作家としてもちょっと筆が立つだけの代替可能な存在であることを良しとする、そんな醒めた心をもつ作家に、結愛と過ごす日常がなにをもたらすのかが本書の見せ場となっています。ひとまず、この巻でふたりの関係性は、落ち着くとこに落ち着いたようですが、優佳理の性格からすると、まだもう一波乱ありそうな気もして、続きが楽しみです。
 
 
 
第16位 眠り姫と百合の騎士 ~お姫様はマゾ責めがお好き!?~/遠野渚
 十年来、官能小説などを発表されている遠野渚先生ですが、実はデビュー前には、百合小説しか書いたことがなかったという先生による初の商業百合小説。
 姫のティリアに幼い頃から仕えてきた騎士のクリス。成長したふたりは婚約者に嫁ぐときのための練習と称して関係を結ぶようになりますが、お互い立場のある身、気持ちを口に出せずにいる両片思いがせつなくもあり、ちょっぴりMなお姫様の要求に、困惑する真面目な騎士様という構図がちょっとコミカルな官能百合。いけないと思いつつも歯止めが利かなりそうなところを必死に理性で抑えようとしたり、逆に思わぬ才能を発揮したりと、ティリアに翻弄されつつ攻めるクリス、どっちが主で従なのか分からなくなりそうな関係性が楽しいです。
 しかし、ティリアは、世界を魔物の進攻から防ぐため、守護する婚約者と共に、命が尽きるまで眠りにつくという役目を負う身。来るべき時の到来、眠り姫を巡る陰謀に巻き込まれ、ふたりを取り巻く状況はきな臭さを増していき、命がけの恋へと発展していきます。ハラハラさせられながらも、想いを交わしたふたりの辿り着く結末には、きっと誰もが万感の思いを抱かされると思います。
 
 
 
第15位 好きで鈍器は持ちません!~鍛冶と建築を極めた少女は、デカいハンマーで成り上がる~/山田どんき

 【あらすじ】まだ赤ん坊だった頃に、生まれた村を魔物に焼き払われたハンナは、剣技を極め【至剣の姫】とも呼ばれる高名な冒険者であるエルフのレイニーに育てられる。いまは前線で魔物と戦うレイニーとの再会を願い、冒険者の道を志したハンナだが、あらゆる武具や魔法に対する適性がゼロの彼女は、とうとう養成学校を退学させられる。しかし、行き倒れたところを拾ってくれた大工の棟梁の下、ハンマーを手にした時から運命は一変する。ハンマーで叩けばどんなものでも加工できる能力を得たハンナの逆転劇。

 
 山田どんき先生の<小説家になろう>発のデビュー作。ハンマーで叩けばどんなものでも加工できる能力を得た少女・ハンナが、その手から繰り出す奇想天外な技で、逆境を跳ね返し、弱きを助け強きをくじく痛快なファンタシー作品です。
 ハンナは、高名な冒険者である養母に愛情を注がれて育ち、“『弱い人、虐げられている人を助けるのが冒険者』”だと教えられます。行き場をなくしたときには、大工の棟梁たちに迎え入れられ、人の温かみを知りました。一方、棟梁たちの社会的地位は低く、冒険者養成学校ではどれだけ努力しようと結果が出せずに、周囲からは露骨に見下されてきました。
 優しい心を持つ女の子に育ちつつも、踏みつけられる痛みを知るハンナだからこそ、報われない女の子たちのことが放っておけません。薬師としての腕前は確かなものの、口下手なために商売不振に陥っていたミラや、訳ありな少女・ガレの窮地を救っていきます。
 ハンナと仲良くなる彼女たちに加え、ハンナを毛嫌いする冒険者養成学校理事長の娘で学園の首席セシルと、その友人で学校時代にはハンナをさんざん馬鹿にしてくれたエルフの少女・ローゼリアも登場。ローゼリアは、偶然、ハンナのおかげで九死に一生を得て以来、手のひら返しにハンナに擦り寄り、邪険にされてもつきまとうようになりますが、どうにも一癖ありそうな子なので、ハンナとどういう関係になっていくのか興味をひかれます。そのほか、どうあってもハンナの実力を認められないセシルがハンナを認める日がやってくるのかなど、これからの展開にも期待できる作品でした。
 
 
 
第14位 打撃系鬼っ娘が征く配信道!/箱入蛇猫

 「小説家になろう」発の箱入蛇猫はこいりへびねこ先生のデビュー作。

 主役の菜々香は、小柄ながら常人を遥かに凌駕する身体能力の持ち主ですが、あまりのオーバースペックに現実の世界では発揮する場面がありませんでした。しかし、幼馴染の親友・凛音に誘われてはじめたヴァーチャルゲームの世界では、秘めていた力を開放することができ、その特異な戦闘スタイルが注目を集めるプレーヤーになっていきます。ゲーム内の世界観も練られているので、そのストーリーとともに菜々香の迫力のある戦闘シーンが楽しめます。
 菜々香が大好きな凛音は、所有する高層マンションの一室をポンと与えたり目に入れても痛くない可愛がりようを見せますが、凛音が菜々香をプロゲーマーの道に誘ったのも、窮屈そうに暮らす菜々香に思う存分力を揮わせてあげたいと思っていたからで、たびたび見せる菜々香を思いやる姿に深い愛情が感じられます。あまり人と関わり合うことのなかった菜々香も、凛音には特別に気を許している様子がうかがえます。
 菜々香と凛音の日常のやりとりや、凛音の従妹でふたりを慕うトーカとの交流するシーンが挟まれたり、NPC同士の吸血鬼百合が展開されたり、菜々香とプレイヤーを殺すことに無上の喜びを見出すプレイヤー≪殺人姫≫ことロウとの死闘が描かれたり、そのロウと鍛冶職の女性との関係だったり、ほのぼのから殺伐としたものまで、様々な関係性が埋め込まれています。
 今年の1月に発行された3巻では、それまで、断片的に語られていた菜々香の生い立ちに関する謎がついに明らかになります。菜々香が内に秘めていた凛音に対する想いの強さに、ただただ圧倒されます。 
 
 
 
第13位 神城リーリャは白百合の香りに恋焦がれる/ちょきんぎょ
神城リーリャは白百合の香りに恋焦がれる (DIVERSE NOVEL)

神城リーリャは白百合の香りに恋焦がれる (DIVERSE NOVEL)

 

 

 2019年に完結し、全8巻を数えたデビュー作『転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい』を書き継ぐ傍ら、美少女文庫で官能小説を発表されてきた、ちょきんぎょまる。先生。初の書下ろし百合小説が、官能ライト文芸レーベルの一冊として刊行されました。百合小説を刊行するのが“長年の夢だった”というだけあって、“文字数オーバーして削るほど”書いたという気合の入りよう。「匂い」をテーマに官能描写にもこだわりながら、ふたりの女の子の恋模様もじっくりと描かれた欲張りな作品に仕上がっています。
 名門女子校に通う生粋のお嬢様である神城かみしろリーリャは、特待生の百合園明日葉ゆりぞのあすはが家族の事業の失敗によって退学の危機にあると知り、窮地を救います。恩返しに「なんでもする」と言われたリーリャは、秘めていた想いを抑えられず、ふたりは急速に近づいていきます。
 リーリャは、欲望に忠実な振る舞いで明日葉を困惑させる反面、それまで、家柄に恥じない人物であろうと常に自分を律して、周囲の期待に応え、博愛を旨としてきただけに、はじめて一人の人間への執着を覚えたことで、次第に、自身の欲望を純真な明日葉にぶつけてしまう罪悪感や、膨れ上がる独占欲を止めらない自分に対する嫌悪感に苛まれていきます。明日葉は明日葉で、リーリャの自分だけに見せる姿に惹かれ、すべてを受け止めようとする度量もありますが、次第にリーリャを自分が独占してしまうことに躊躇いを覚えていきます。
 そんなふたりの葛藤が生み出すすれ違いに、もどかしくじれったい気持ちにさせられつつ、リーリャが迷走すれば、明日葉が支え、明日葉が立ち止まれば、リーリャが導く。互いに手を差し伸べあって紡がれていく、初々しいふたりの恋模様に魅了されました。
 
 
第12位 女子高生同士がまた恋に落ちるかもしれない話。/杜奏みなや

  2017年のデビュー以来、メディアワークス文庫で活躍されている杜奏もりかなみなや先生が、電撃文庫から満を持して発表された百合シリーズ作品です。

 至って普通の女の子を自認する桐谷陽南きりたにひなみと、その友人で世話好きな永井愛梨咲ながいえりさ、愛梨咲とは幼稚園の頃からの幼馴染である仁熊飛和にくまとわは、星が好きな陽南が立ち上げた星楽部の部員。陽南と飛和は、自分たちの寮の修繕が終わるまで、愛梨咲の入っている寮にお世話になることに。陽南が相部屋になった御子柴佑月みこしばゆづきは、人見知りなのかなんだか挙動不審な女の子で、共同生活は前途多難と思いきや、愛梨咲は飛和のだらしなさに文句を言いながらも世話を焼き、飛和はからかいがいのある佑月をいじり倒し、佑月は大好きな星のことになると夢中になって周囲を置いてけぼりにしたり、そんな三人に囲まれて陽南に、にぎやかな日常が訪れます。
 ところが、佑月が陽南のかつて一回だけ一緒に星空を眺めた初恋の相手だと判明。それからの陽南にもう一回好きになってもらおうとする佑月の迷走ぶりが、大変かわいらしいです。陽南を大好きな気持ちが全開な佑月に対して、陽南は、ゆっくりと時間をかけて、幼い頃、佑月に抱いた気持ちを取り戻していき、ふたりの間にある特別な絆を確かめあうまでの過程がじっくりと描れています。
 こうして特別な関係になったふたりですが、2巻では、陽南は佑月の「好き」と自分の「好き」の違いに思い悩むなか、文化祭の開催が迫ります。引っこみ思案でクラスになかなか溶け込めなかった佑月が、文化祭の準備をきっかけに次第にクラスメイトたちと打ち解けていくのを目の当たりにして、陽南はそれまで覚えたことのなかった感情が芽生えてきて、佑月に向ける自分の感情がなんなのか惑います。佑月は佑月で、陽南に対する想いがあらぬ方向に暴走してうまく伝えられなかったり、初めての恋に手探りで向き合っていく不器用なふたりの物語に、もどかしくも甘酸っぱい気持ちにさせられます。
 また、二巻では、飛和の愛梨咲に対する屈折した心情の一端も明らかになり、それまでのエピソードも違った意味合いを帯びてきて、より味わい深く感じられます。ぜひとも、このふたりの物語も読んでみたいものです。
 
 
 
第11位 百合に挟まれてる女って、罪ですか?/みかみてれん
百合に挟まれてる女って、罪ですか? (電撃文庫)
 

【あらすじ】長年、勝負を繰り広げてきた神枝組と久利山組。今度こそ白黒つけようと、女組長の二人が選んだのは、互いの娘にターゲットを誘惑させ、先に相手を篭絡させた方が勝ちというハニートラップ勝負。いざというときの異性を篭絡する手管を教え込まれてきた二人の娘、神枝楓かみえだかえで久利山火凛くりやまかりんは勝負に乗り出す。ターゲットはメイド喫茶で働く一般女性、朝川茉優あさかわまゆ。ターゲットが女性であることに困惑しつつも茉優に接近する楓と火凛だが、不運続きで誰とも付きあったことのない茉優は、彼女たちをさらに困惑させるのだった。

 
 優しく包み込んでくれる楓と、飴と鞭を巧みに使い分け、小悪魔な魅力を放つ楓。タイプの違う美少女の猛攻に晒されてしまい、どちらもすぐ好きになっちゃって、どっちかなんて選べない茉優。楓と火凛の高すぎる火力が均衡してしまい、勝負にならないハニートラップ勝負には思わず笑ってしまいます。楓と火凛も、無類のお人よしで危なっかしい茉優のことがだんだん本気で放っておけなくなってしまいます。
 幼少期にまで遡る楓と火凛の間にある複雑に入り組んだ心境、母親同士の関係や、母娘間の愛情やすれ違い、どこを切っても女性同士の関係にあふれています。ラストのタイトルの伏線回収もお見事で、大満足の一冊です。
 
 
 
第10位 誰かの翼になりたい僕らの/綾加奈
誰かの翼になりたい僕らの (百合小説)

誰かの翼になりたい僕らの (百合小説)

 

 【あらすじ】他人の気持ちがわかりすぎるせいで、いつも周囲に慮ってきた藍田聡莉あいださとりは、人の頼みを断ることができない。高校生になった藍田は、案の定、いち早く声をかけてきたバスケ部の部長に流されるまま、特に興味もなかったバスケ部に入部する。ところが、そのせいで、いままで藍田の「親切」を唯一拒絶してきた中学時代の同級生、最原京子さいはらきょうこと顔を合わせることになってしまう。そのうえ、部長は、ぎりぎり試合できる最低限の人数しか揃っていないバスケ部で、全国制覇を目指すというのだが。

 
 2020年も、長編6作に短編集と、精力的に作品を発表されてきた綾加奈先生。202019年11月1日から2020年1月9日にかけてPixivで開催された、第2回百合文芸小説コンテストの各賞受賞作を集めたアンソロジーにも名を連ねています。
 バスケのこともよく知らず、自他ともに認める運動音痴で、小柄で体力もない聡莉が、一癖ある部員たちをまとめ、次第にバスケ部の柱となって活躍していく下剋上ストーリー。頭脳プレイで魅せる迫力ある試合シーン、強力な(そして綾加奈先生のファンなら嬉しい)ライバルも登場する、手に汗握る爽快なスポーツ小説です。
 人に合わせるばかりで、自分の主張を持たない空っぽの人間だと自己認識していた聡莉が、自分でも持てあましていた性格を長所に換えて、だんだんと強かに、周囲の人間を手のひらで転がすようにまでなっていくのが痛快です。
 聡莉にも考えが読めず、なにかときつく当たってきた京子が、聡莉に対して意外な気持ちを抱いていたことを知り、コートでの彼女を見ているうちに形になっていく聡莉の想い。そして、部員たちそれぞれの、たとえぶつかりあってでも持てる力を振り絞って誰かの翼になりたいという想いが、胸を熱くさせてくれます。
 
 
 
第9位 パラ・スター<Side百花><Side宝良>/阿部暁子
パラ・スター 〈Side 百花〉 (集英社文庫)

パラ・スター 〈Side 百花〉 (集英社文庫)

  • 作者:阿部 暁子
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: 文庫
 
パラ・スター 〈Side 宝良〉 (集英社文庫)

パラ・スター 〈Side 宝良〉 (集英社文庫)

  • 作者:阿部 暁子
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 文庫
 
【あらすじ】
<Side百花>親友の車いすテニス選手、宝良のために最高の競技用車いすをつくるという夢を胸に、車いすメーカーで働く百花ももか。目覚ましい活躍を見せ、着実に国内のトッププレーヤーとして登りつめていく宝良たからに対し、まだまだ車いす作りの経験を積まなければいけない段階にいる百花は、焦りを抱えていた。はじめての顧客である小学生との交流を通して、目標であり教育係である小田嶋の厳しい指導の下、車いす作りへの姿勢を見つめなおしていく。
<Side宝良>
瞬く間に車いすテニス界の国内トップ3に食い込んだ宝良は突然の不調に沈む。そのうえ、ずっと指導してくれた恩師のコーチは病と戦うために離脱し、新任コーチとの関係に不安を抱いていた。しかし、親友・百花をはじめとする信頼と期待を寄せてくれる人々との交流、コートの中で火花を散らすライバルたちの存在を糧に、宝良はあがき続ける。
 
 2008年にコバルト文庫からデビュー、その後オレンジ文庫での執筆を経て、2018年には、集英社文庫から初の一般向け作品を刊行された阿部暁子あべあきこ先生。本書は引き続き集英社文庫から発行された一般向け作品の第二弾。毎年、年末に発表される〈本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン〉では、1位に選ばれています。
 
 最初に仲良くなろうとしたときも、宝良が陸上テニスの道を諦めなければならなかったときも、何度も宝良に拒まれて、それでも一途に思い続け、いまや宝良の唯一の親友となった百花。<Side百花>では、ふたりの馴れ初めや今の関係に至るまでの経緯と、百花が使用者に寄り添った車いすづくり、宝良のための車いすづくりを目指しながらも、理想と現実の狭間でもがく姿が描かれます。
 宝良は、他人にも厳しいけれど、なによりも自分に厳しい女性。心を許す百花の前でも決して弱音を吐きません。一方、百花の献身に面と向かって感謝の言葉を口にすることはありませんが、それも車いすテニスの頂点に立つという宝良の望みが、百花の願いでもあることを理解しているからこそ。百花が助けを呼ぶならばどこにいても駆けつけようという誓いも内に秘めています。
 <Side宝良>では、車いすテニス界の絶対の女王であり、宝良の乗り越えなければいけない最大の壁である玲や、宝良に割って入られるまで、玲に次ぐ位置に君臨してきた最上涼子などライバルたちも登場、彼女たちの過去のエピソードや宝良との関係も印象に残ります。
 ふたりで一つの夢を追いかけるその絆と情熱に圧倒される熱いスポーツ小説です。
 
 
 
第8位 ツインスター・サイクロン・ランナウェイ/小川一水
 第一線で活躍し続け、国産SFの屋台骨を為している小川一水先生による、百合SFアンソロジー『アステリズムに花束を』収録の同題短編を長編化した作品。短編版で描かれたエピソードが違う形で盛り込まれていたり、詳細に社会背景が書き込まれています。
 人類が宇宙に進出してから遥か後代。辺境の巨大ガス惑星の近傍では、男女で行う宇宙漁が生活の基盤となっている社会が築かれていました。行き遅れているテラの前に現れた謎に満ちた家出少女・ダイオードは、誰にも理解されずにいたテラの類まれな資質を見抜いて、テラの相方に志願。掟破りの女性ペアが漁に乗り出します。見た目も気質も正反対な社会のはみ出し者であるふたりが、因習に満ちた世界で生きる道を切り開いていく爽快なストーリーです。
 長編化によって、意地っ張りで素直じゃないダイオードと、包容力のあるテラのラブコメ分も増量する一方、より男尊女卑社会の実態が顕わになり、ますますふたりを応援したくなります。さらに、新たな謎も加わり、続編が待ち遠しいです。
 
 
 
第7位 このぬくもりを君と呼ぶんだ/悠木りん
このぬくもりを君と呼ぶんだ (ガガガ文庫)

このぬくもりを君と呼ぶんだ (ガガガ文庫)

 

  第14回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞した悠木りん先生のデビュー作です。圧倒的な人気を誇る百合漫画『やがて君になる』の中谷鳰なかたににお先生のイラストも目を惹く本作は、地球環境の悪化により、人類が地下都市での生活を余儀なくされた時代を舞台にした二人の少女の物語です。

 人工的に映し出される空を、上辺だけの人間関係を、内心、フェイクと忌み嫌うレニーにとって、そんな自分をさらけだせる唯一の相手、サボり魔の不良少女・トーカと過ごす時間だけが、心の拠りどころとなっていました。しかし、出自を蔑まれるトーカと真面目な優等生で通してきたレニーの関係を周囲の空気は許さず、ふたりの間に距離が開きはじめます。快活な少女に見えたトーカの抱える葛藤、心の支えを失って思わぬ方向へ暴走し始めるレニーの想いは、痛ましく胸を抉られます。ふたりの間にできてしまった深い溝を乗り越えて、彼女たちの求めるリアルを手にすることができるのか。さまざまな感情が渦巻く少女たちの心を余すところなく描き出す作品です。
 
 
第6位 サクラの降る町/小川晴央

  2014年に、電撃小説大賞金賞を得た『僕が七不思議になったわけ』でデビューされて以降、メディアワークス文庫から作品を刊行されていた小川晴央おがわはるお先生の第10回京アニ大賞KAエスマ文庫特別賞受賞作品。

 季節に関係なく空から降ってくる桜の花びら。アマザクラと呼ばれる現象が起こる町に住む神屋敷かみやしきツバサだけが知る秘密。それは町に降るアマザクラの花びらが、幼馴染でかつては親友だった環木たまきヒヨリの感情と連動していること。ツバサはある出来事以来、ヒヨリとは疎遠になったまま孤独な高校生活を送っていましたが、そんなツバサの前に、転校生の紫々吹ししぶきルカが現れます。ルカからアマザクラに関する気になる情報を聞かされたツバサは、ヒヨリの身を案じ、事の真偽を確かめるため、ルカとともにヒヨリと接触を図ります。
 大の親友だったはずのツバサとヒヨリのぎこちないやりとりはほろ苦く、ある理由からアマザクラの秘密を知りたいルカと、ツバサのことを守りたいヒヨリ。打算で結びついたふたりの遠慮のないやりとりと関係の変化にも注目です。少女たちがそれぞれ抱える秘密と、降りそそぐ花弁が物語る想いを紐解いていく百合ミステリです。
 
 
 
第5位 声優ラジオのウラオモテ/二月公

  応募総数4607作のなかから第26回電撃小説大賞の大賞を獲得した、二月公にがつこう先生のデビュー作です。

 最初に当たり役を得たものの、その後泣かず飛ばすの声優・歌種うたたねやすみこと佐藤由美子。人気急上昇中の声優・夕暮夕陽ゆうぐれゆうひこと渡辺千佳。ふたりが同じ高校に通っていることに目を留めたプロデューサーの意向によって、コンビを組んでラジオ番組に出演することが決定。ところが、ふたりの相性は最悪。由美子は、アイドル的な活動にも積極的、学校では多くの友人に囲まれる明るい性格で、ひとり親の母を支え家事もこなすしっかり者。一方、千佳は、演技へのこだわりから、アイドル的な活動には乗り気でなく、対人関係を築くのも不得意で学校では独りで過ごし、演技に熱を入れるあまり、身の回りのことには無頓着。
 声優としての顔と素顔のギャップがあるという共通点はあるものの、声優としてのスタンスの違い、まるきり正反対の性格から、千佳は由美子につい突っかかり、そうなると由美子も張り合って、口を開けば喧嘩になってしまいます。しかし、内心では互いに実力を認め合っていて、本当は誰よりも頑張る姿を知っている。でも、素直には言いたくない。1巻では、そんなふたりが、千佳を襲う声優業の危機を前に、共闘していく流れが最高です。それぞれの個性がぶつかり合い、こいつには絶対に負けたくないという相手がいるからこそ輝ける――ライバル百合の魅力がたっぷり詰まった作品です。
 嬉しいことに、順調に巻を重ねているこのシリーズ。2巻では、ふたりの声優業存続をかけた正念場を迎え、3巻では仕事上の壁にぶち当たりあがく由美子の姿が描かれます。ふたりの熱い戦いはまだまだ続いていくようです。
 
 
 
第4位 ピエタとトランジ<完全版>/藤野可織
ピエタとトランジ <完全版>

ピエタとトランジ <完全版>

  • 作者:藤野 可織
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 単行本
 

  芥川賞作家でもある藤野可織先生の名探偵トランジと助手のピエタの冒険を描いた年代記。この長編の原点となったふたりの出会いを描いたエピソード「ピエタとトランジ」(『おはなしして子ちゃん』所載)も巻末に収録した<完全版>として刊行されました。

 トランジは天才的な頭脳を持ちどんな事件も解決してしまう名探偵ですが、同時に名探偵として致命的な体質を持っています。それは周囲に事件を誘発してしまうこと。トランジに日常的に接する人間は、たいてい事件を起こすか被害者になってしまいます。トランジの体質を知った者も皆、死ぬか、トランジに隠遁生活を強いて、影響から逃れようと離れていくかするわけですが、ピエタだけはなぜか死にもせず、元気にトランジの助手を務めています。
 トランジと共にする冒険をこよなく愛するピエタにとって、いわばトランジはいわゆる推しのようなもの。事件を解決していく瞬間こそがトランジの一番輝く時間、その推しの輝いている姿がみたい。もっと輝かせたい。そのためには、簡単には殺されないように武術を修めたり、猛勉強して医者になることも辞さない。やがて、トランジの体質が等比級数的に伝播していき、人類が滅びはじめても、ピエタはちっとも気に病んだりしません。
 トランジは自分の体質についてピエタほど割り切れていないようで、ピエタを巻き込むことにもあんまり歓迎していない様子をみせることもあります。ただ、トランジが、直接、思うところを口に出すことはないだけに、その窺い知れない複雑な心境を間接的に覗かせる描写がすごく印象的です。
 20代の終わりから、30代の中頃までは、ふたりにとっての暗黒時代が訪れますが、結局は、結婚、生殖のためのセックス、出産――絵に描いたような<女の幸せ>では、二人の冒険は止められず、人類が滅亡しようが、生きたいように生きていく。そんなふたりの姿が爽快無比なバディものです。
 余談ですが、人類滅亡を扱った作品は多いですが、しがらみを吹っ飛ばして自由に生きるふたりの姿を見せられると、滅亡に瀕した人類がシステマティックに男女を交配させて子孫を残すというような設定の小説や漫画なんかを見かけても、「そこまでして人類って残さなきゃいけないものかな?」なんて思っちゃいます。個人的には、森奈津子の「西城秀樹のおかげです」に並ぶ衝撃を受けた人類滅亡SFでした。
 
 
 
第3位 転生王女と天才令嬢の魔法革命/鴉ぴえろ
転生王女と天才令嬢の魔法革命 (ファンタジア文庫)
 
転生王女と天才令嬢の魔法革命2 (ファンタジア文庫)
 
転生王女と天才令嬢の魔法革命3 (ファンタジア文庫)
 

  コミカライズも始まっている、鴉ぴえろ先生の「小説家になろう」発のデビュー作。魔法がなかった世界にいた記憶を持つ転生王女アニスフィアと、才媛として名を馳せる貴族の令嬢ユフィリアの関係を軸にした作品です。

  アニスフィアは、魔法に対する憧れは人一倍強いものの自身は魔法が使えません。王族や貴族なら魔法を使えて当然という風潮のある王国で、白い目で見られながらも、魔法は人を笑顔にするものという信念に基づいて、魔法を研究する、“魔法科学”-略称“魔学”を提唱し、魔法を利用した道具の開発に取り組んでいます。その活動を通して、特権階級と深く結びついた魔法を力を広く開放して、人々の役に立てようしています。 
 一研究者であるアニスフィアにとって、王女という立場は恩恵もあるけれど、窮屈なもの。いざとなればその立場を活用する強かさも覗かせつつも、堅苦しいことは大嫌いで、奔放な楽天家です。一方、ユフィリアは、魔法の才能にも溢れていて、貴族として義務感から常に己を律し、王子との婚約も、王の側近の娘ならば当然のことと受け止め、将来の王妃として恥じることのない生き方をしようとしていました。
 対照的なふたりの物語は、ユフィリアが王子から婚約破棄を突き付けられたことから始まります。そのことで政治的に難しい立場に立たされてしまったユフィリアを保護するため、アニスフィアは自身の魔法研究の助手として迎え入れます。最初は突然与えられた自由に戸惑うばかりだったユフィリアが、異質で理解しがたい存在であったアニスと共に過ごすうちに、徐々に徐々に心を開いていき、アニスの在り方に惹かれていく過程をじっくりと繊細に描いています。高い能力を持ちながら、ただ求められる役割を果たすだけだったユフィリアが、心からの望みを得られるように、アニスフィアは、ユフィリアの意思に一切、干渉しようとせず、焦れることもなくじっと見守ります。また、アニスフィアと専属の侍女・イリアとの、長い付き合いならではの気の置けないやりとりも楽しいです。
 2巻では、アニスフィアとは相容れない信念を持ちながら、魔法研究に関しては互いに認め合い研究をともにするティルティが登場。その存在にも触発され、ユフィはアニスを支えるために自分に何ができるのか、どのようにすればいいのか自問していきます。魔学を快く思わない貴族たちによって窮地に立たされたアニスフィアのために、覚悟を決めたユフィリアが立ち上がる姿には快哉を叫ばずにはいられません。そして、アニスフィアが婚約破棄の原因となった少女レイニを保護したことを皮切りに、ふたりを取り巻く環境は風雲急を告げ、やがて、ユフィリアを苦境に追いやった王子アルガルドとアニスフィア姉弟の全面対決に発展していきますが、アルガルドのアニスフィアに対する複雑に入り組んだ想いと、アニスなりに幸せを願ってきた弟に対する想いがぶつかり合う対決シーンも読みごたえがあります。
 今年1月に発行された3巻を以って第一部完となった本シリーズ。王位継承者としての義務を果たさなければいけなくなったアニスフィアは、入れ込んでいた魔学の研究を諦めなければいけなくなります。気丈に振舞いユフィにさえ真意をみせてくれないアニスの姿を目の当たりにし、彼女の本当の幸せを願いながらどうすることもできずに苦悩を深めるユフィが辿り着いた結論は、アニスにとって受け入れ難いもので、譲れぬふたりは互いの思いの丈をすべて吐き出しながら、ぶつかり合っていきます。ひとり先を行く王女の、その背中を追いかけるところから始まったふたりの関係が辿り着いたひとつの着地点を、ぜひ目に焼きつけていただきたいと願います。
 こうして、転生王女と天才令嬢の物語は一区切りついた形ですが、まだふたりの魔法革命は始まったばかり。第二部以降の続刊を待ちたいと思います。
 
 
 
 
第2位 わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)
 2020年の百合シーンに於いて、ライトノベル・レーベルから、3つのシリーズを上梓、『電撃G’sマガジン』発の読者参加企画で、お嬢様学園を舞台にした『私のシスター・ラビリンス』の原案・執筆を務め、『電撃G’sマガジン』誌上とカクヨムで展開、さらに原作者を務める漫画『もし、恋が見えたなら』の連載開始、単行本化と八面六臂の活躍を見せてくれたみかみてれん先生。商業書下ろし作品としては2016年の『魔少女毒少女』以来となる完全新作シリーズが登場しました。
 
 中学時代、友だちができず、引きこもってゲームしてばかりだった甘織あまおりれな子は、高校進学を機に心機一転、友達に囲まれる楽しい学校生活を目指します。幸い、入学早々話題の的になっていた学園のスター王塚真唯おうづかまいを中心にした女子グループに属することができ、順風満帆と思いきや、周りのハイスペック女子たちに合わせるためにとにかく頑張った結果、元がネガティヴ思考なれな子に限界が訪れます。入学から2ヶ月経ったある日、我慢できずに教室を飛び出したれな子ですが、心配して後を追ってきた真唯に意外な悩みを聞かされ、れな子もひた隠しにしてきた高校デビューの道のりを真唯に打ち明けます。お互いの秘密を共有し、クラスメイトから、学生生活を支えてくれる親友へと、れな子が憧れた関係に一歩近づいたかと思えたその矢先「どうやら私は、君をひとりの女性として好きになってしまったようだ」と真唯に告白されてしまいます。いずれ別れるかもしれない恋人より、一生の親友が欲しいれな子と、恋人になりたい真唯。かくして、譲れないふたりはどちらの関係がより素晴らしいか実践でプレゼンしあうという勝負が幕を開けます。
 何をやっても様になる真唯に情熱的に愛を囁かれて、気持ちをぐらつかせながらも、真唯の想像を絶する上流階級の暮らしぶりに、根っから庶民なれな子がどん引きしたり、なんでも持ってて自己肯定力無限の真唯と、自己評価の低いれな子の噛み合わないやりとりが笑いを誘いますが、やがて、ふたりの勝負は思わぬ騒動を引き起こします。テンポのいい会話と練達の文章で気持ちよく読ませてくれるガールズコメディです。
 2巻は、グループのひとりで真唯とは幼馴染の琴紗月ことさつきを中心にしたストーリー。真唯とれな子との一件で被害を被った紗月が、真唯に一泡吹かせようと取った手段は、れな子に交際を申し込むこと。紗月の目論み通りの反応を示す真唯の動揺、紗月のせいでれな子がちょっとした修羅場に巻き込まれてしまうのがおかしいです。紗月とれな子の仲が、単に真唯をやりこめるためのパートナーから、ちょっとづつ深まっていくのですが、その過程で、紗月が覗かせる意外な素顔、破天荒な真唯との長い付き合いで拗らせてしまった複雑な心情を知れば知るほど、真唯に勝とうとする紗月を応援したくなります。
 真唯グループにはほかにも、全校生徒に可愛がられている学園の妹的存在で、真唯が推しの小柳香穂こやなぎかほ、優しく思いやりに溢れた瀬名紫陽花せなあじさいがいます。一癖あるメンバーの中にあってグループの良心ともいえる紫陽花は、真唯たちに振り回されるれな子にとって癒しの存在。あまりに良い子過ぎて、ときどき、感極まったれな子が紫陽花に対して無自覚にフラグを立てていくのがおかしいですが、それがグループ内の人間関係にさらなる波乱を呼ぶのかとっても気になります。
 女の子たちが魅力たっぷりに描かれていて、とにかくみんな幸せになってほしい、そう思わずにはいられないシリーズです。
 
 
 
 
第1位 女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話/みかみてれん

  2014年にデビューされて以来、ライトノベルの分野で活躍されていたみかみてれん先生。近年は、個人で「みかみてれん文庫」を立ち上げ精力的に百合小説を書かれていました。なかでも、個人出版作品としては破格のヒット作となった『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』が、満を持してGA文庫から商業作品として世に送り出されることになりました。

 「女同士なんてありえない」そう言い放った榊原鞠佳に、同級生の不破絢は、100万円を差し出し、一日1万円で買うと宣言。100日間で女同士がありえないかどうか――絢が鞠佳を落とすか、鞠佳が耐えきるのかという勝負を持ちかけます。物欲と対抗心からまんまと勝負に乗った鞠佳ですが、とても意地悪に攻め立てたかと思えば、お姫様のように甘やかしてくれる絢に、じきに身も心も蕩かされていく始末。それでも意地を張って負けを認めない鞠佳ですが、自分にとっての絢と、絢にとって自分がどんな存在なのか、ふたりの関係にもやもやを抱えるようになっていきます。
 鞠佳は、本来、空気を読むのが得意で、そういう器用さをみんなで楽しい時間を過ごすために発揮する優しい女の子ですが、絢にだけは激しく対抗心を燃やしてしまいます。一方、涼しい顔で鞠佳を翻弄する絢も、だんだんいつもの完璧超人ぶりとは違う顔を覗かせるようになっていって、ますますキャラクターを魅力的に見せると同時に、ふたりの関係が漂わせる甘さも倍増していきます。
 同人版は現在、4冊目まで発表済。おまけもプラスされたGA文庫版も年内には2冊刊行されましたが、巻を重ねるごとに「まだこれ以上があるの?」と思ってしまうくらい甘いラブストーリーです。

 

 

 

 

この百合小説がすごい! 2020

 

 2019年を振り返り、 独断と偏見で選んだおすすめの百合小説を、ランキング形式でご紹介します。今回、対象としたのは、ノベライズを除く19年中に発表された新作、または1巻が発行されたシリーズ作品です。恐れ多くも順位をつけさせていただきましたが、作品の優劣を論じたものではなく、筆者の好みと気分によるものとお含みおきください。ひとえに、小説でもより多くの百合作品が書かれ、百合の魅力に目覚める人々の増えることを願っております。

 
 
35位 ウチらは悪くないのです。/阿川せんり
ウチらは悪くないのです。

ウチらは悪くないのです。

  • 作者:阿川 せんり
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: 単行本
 
【あらすじ】大学生活をだらだら過ごすあさくらは、気づくと外堀を埋められて、思ってもみなかった男女交際をすることに。勝手の分からない初めての体験に悪戦苦闘するあさくらを、昔からの友人で小説家志望のうえぴは、生暖かく見守るけれど……
 
 「恋愛しなきゃ人生の損」「顔はいいんだからオシャレしなきゃ」「友人は多いほうがいい」などなど、外野の振りかざす「常識」に、「そうなのかなァ」なんて流されてしまうあさくら。新しい一歩を踏み出すなどといってみれば、いかにも青春という感じではありますが、あさくらとうえぴがふたりして空回りしたあげく、経験を積んで一皮むけていくなんていうストーリーとはあさっての方向に落ち着いていくのが愉快です。
 
34位 雪が白いとき、かつそのときに限り/陸秋槎
雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)

 

 【あらすじ】生徒会長の馮露葵(ふうろき)は、四年前、学生寮で起きた死亡事件を調べ始める。推理が行き詰まりを見せた頃、四年前の事件と類似した状況で、ひとりの女生徒の死体が発見される。

 
 18年中に翻訳された『元年春之祭 』が、ミステリ界隈のみならず、百合ファンの間でも反響を呼んだ陸秋槎先生の二作目の長編です。
 推理のプロセスとロジックを重視した重厚な謎解きと、未だ何者でもない少女と、何者にもなれなかったかつての少女たちが織りなす青春本格推理。解決編直後の一文の圧の強さが後を引きます。
 
 
33位 花園に来る嵐/夢見絵空
花園に来たる嵐

花園に来たる嵐

 
【あらすじ】生徒たちが華族派と庶民派で二分される名門女子校。生徒会長の座を巡って派閥同士の対立が激化するなか、校内で殺人事件が発生。事件に胸を痛める生徒会長の佳乃。その幼なじみの少女・葵が解決に乗り出す。
 
 伏線の張り方、犯人が分かったと言い出すタイミング(こういうケレン味はやはりミステリの華)、死体の周りに散りばめられた鳳仙花の扱い、犯人の意外性など、ミステリのツボをよく分かっている書きぶり。幼いころは懐いていた葵が、再会した佳乃に素っ気なかった理由はミステリならではで、事件解決後、佳乃が葵と再び絆を結び直していくのが爽快です。
 女子校が舞台だけあって、佳乃と葵の関係以外にも、様々な女性どうしの関係が描かれていますが(特に祥撫と蓮の主従が尊い……つらい……)、本作に登場した女の子たちの恋が描かれた短編を3作収録した『令月とオフィーリア』も発行されています。
 
32位  魔女と少女の愛した世界/浅白深也
魔女と少女の愛した世界 (DENGEKI)

魔女と少女の愛した世界 (DENGEKI)

 
【あらすじ】町はずれの森の中に住む魔女のエリシアの家に、迷い込んできた幼女。とっておいた朝食のパンを食べられた腹いせに、奴隷にして働かせようと思いつくが、まだ幼い女の子が器用に家事ができるわけもなく、そこで、人の子を売れば金になると聞いたエリシアは、さっそく売り払おうとする。だが、より高値を得るには教育も必要だと諭され、渋々ながら、少女にカナリアと名付け一緒に生活することにする。
 
 本作は、電撃文庫編集部がウェブ小説コンテスト「電撃《新文芸》スタートアップコンテスト」に投じられ、応募総数2,429作品を超えるなか、最終選考の9作に残った浅白深也先生のデビュー作です。
 純粋にエリシアを慕うカナリアのいじらしさを前に、なんだかんだで、エリシアが振り回されているのがおかしくて、にまにましちゃいます。人嫌いの徹底した個人主義者のエリシアにも、家族に捨てられた過去があり、同じ痛みを知る者として、カナリアを庇護し、導く存在へと変わっていきます。そして、エリシアもまた、自身が望んでも得られなかった愛情を、与える側として、カナリアと過ごした日々に教えられていく。そんなふたりの関係が愛おしく感じられる作品でした。
 

 

31位 むらさきのスカートの女/今村夏子
【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女

【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女

 
【あらすじ】近所に住むむらさきのスカートの女。彼女とともだちになりたい“わたし”は、女を同じ職場で働かせることに成功する。
 
 2019年度上半期、第161回芥川賞を受賞した本作。同じ職場で働くよう誘導するために、涙ぐましい努力をしておきながら、一向に言葉を交わす気配もなく、ひたすら観察し続けるだけ。なぜ語り手はそこまでむらさきのスカートの女に固執するのか、正体不明の想いが、この小説に不気味なユーモアを湛えています。
 果たして、“わたし”はむらさきのスカートの女と友達になれるのかといえば、一瞬だけエモい展開を見せつつも、「まあそうなるよね」という結末に収束していくのが、なんともいえない脱力感があって、とぼけた味わいに魅力を感じました。
 
 
30位 気ままに東京サバイブ。 もしも日本が魔物だらけで、レベルアップとハクスラ要素があって、サバイバル生活まで楽しめたら。/まきしま鈴木
【あらすじ】会社員の後藤静華は、後輩の雨竜千草を庇って通り魔に刺され致命傷を負う。その瞬間、頭の中に聞こえてきた《声》によって、命を取り留め、ふしぎな能力を手にする。異界から魔物が侵攻しはじめ、いずれ人間社会の力では抑えられなくなることを知らされた静華は、魔物と戦うことを決め、意気揚々とレベルアップを目指す。
 
 殺伐とした世界観ながら、熱いアクションシーンと、豪放磊落な静華が強かに魔物に立ち向かっていくさまが痛快です。
 1巻では、それまで他人と一切深い付き合いをしてこなかった雨竜が、静華と出会って、はじめて抱く感情を描いたシーンが印象的ですが、2巻では、ますますシビアな戦況を迎えて、雨竜も静華の右腕として活躍します。他人には懐かない雨竜が、静華との遠慮のないやり取りに滲ませる信頼感、可愛げのない後輩に文句を言いつつもさっぱりした気性で受け入れる静華とのつながりが見ていて心地よいです。
 
 
29位 マエストロ・ガールズ このコルネット、憑いてます。/天沢夏月
【あらすじ】もう一度吹きたいから体を貸してほしい。拾ったコルネットに憑いた紫乃という幽霊の願いを聞き、美香は顧問の男性教諭目当てで吹奏楽部に入部する。紫乃や同じパートの男子部員の音楽に対する姿勢を触れていくうちに、次第に美香は真剣に吹奏楽と向き合っていく。
 
 演奏活動に明け暮れ、若くして亡くなった紫乃と、吹奏楽に興味などなく全く演奏経験のない美香。およそ接点のなかったふたりが、噛み合わないながらも仲良くなっていくのが楽しいです。美香に厳しい親友のマコもいい味を出してます。そして、やってくる別れのとき。喪失を受け入れられなかった美香が、やがて紫乃からもらった演奏することの喜びを、未来に繋げていこうとする姿に胸を打たれます。
 
 
 28位 あの子の秘密/村上雅郁
あの子の秘密 (フレーベル館 文学の森)

あの子の秘密 (フレーベル館 文学の森)

 
【あらすじ】他人には見えない黒猫だけを友にして、周囲に壁をつくる小夜子。小夜子のクラスに転入してきた明來は、あっという間にクラスの人気者になっていく。明來は孤立する小夜子に友だちになろうと何度も声をかけるが拒絶されるばかり。そんなふたりが、ある日、互いの秘密を巡って衝突してしまい、小夜子が学校に来なくなってしまう。
 
 第2回フレーベル館ものがたり新人賞大賞を受賞した、村上雅郁先生のデビュー作。デビュー作とは思えないほど、研ぎ澄まされた文章で繊細な心理の襞まで映し出す完成度の高い作品で、児童文学界の底力を感じます。誰とでも仲良くなれる女と、絶対に誰とも友達になりたくない女が、やがて深い絆で結ばれていくお話です。
 序盤は、小夜子の拒絶に、かえって火をつけられて、何が何でも友達になってやろうとグイグイくる明來に、小夜子が冷ややかな反応を返すというやりとりが描かれます。お互いの視点から描かれているために、前向きで楽天的な明來と、固く心を閉ざした小夜子の対比がいっそう鮮やかで、互いの辛辣さとユーモアを引き立てていて、語りの妙を感じます。
 そんな緊張感を孕んだふたりの関係は、黒猫の失踪によって変化を迎えます。唯一の親友を失って沈み込む小夜子に、明來は寄り添い、すっかり冷え切っていたはずの小夜子の心が、少しづつ温まっていくのが感じられます。そして、明來もまた、黒猫を探す過程で、心残りのあったある出来事を乗り越えていきます。
 このふたりを中心に、他のクラスメイトの女の子たちも生き生きと描かれていて、かつては小夜子と友達だったマイペースな優歌、優歌の親友で、歯に衣着せぬタイプながら、さっぱりした性格の巴、クラスの女子の中心に位置する美咲。彼女たちの小夜子との関わり方の変化にも注目です。
 固く凍てついた殻を割ってみれば、新しく紡がれようとするつながりや、変わらずにあった友情が、なにより心の奥底まで通じ合った親友の姿がある。とても素敵なお話でした。

 

 

27位 科学オタクと霊感女/半田畔
科学オタクと霊感女 -成仏までの方程式- (LINE文庫)

科学オタクと霊感女 -成仏までの方程式- (LINE文庫)

  • 作者:半田畔
  • 出版社/メーカー: LINE
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: Kindle
 

【あらすじ】科学をこよなく愛する女子大生・浮島華は、人づきあいが苦手。ひとりきりの科学研究サークルを立ち上げ、大学の片隅で実験に没頭する日々を送っていた華の前に、霊が見えるという新入生・四ツ谷飾が現れる。幽霊の存在を否定する華に、飾が触れると、幽霊が見えるどころか、会話さえできてしまうのだった。かくして、華は飾に、強引に霊を成仏させる手伝いをさせられることになるのだった。  

 

 2015年にデビュー以来、ライト文芸の分野で活躍されている半田畔先生の作品です。本書より一足先に発行された『群青ロードショー (集英社オレンジ文庫)』では、4人の女子高生が映画作りを通して友情を深めていく様子を描かれていますが、こちらはふたりの大学生が主人公。霊が成仏できない原因となる心残りを、華が科学オタクならではの知識を活かして解決する、なかなか堂に入った華の名探偵ぶりが見られるオカルトミステリです。  

 友達になろうと真正面からグイグイくる飾に、反発しながらも飾のペースに巻き込まれていく華。素直になれない華が、いつのまにか一緒にいることが当たり前になっていた飾に対する複雑な思いを爆発させてしまうシーンが印象的でした。終盤では、飾の秘密についても明らかにされますが、どちらが欠けても力を発揮できないバディとして、ともに孤独を抱えていた仲間として、結びつきを強めていくふたりの姿がまぶしい作品でした。

 

26位 友達未遂/宮西真冬
友達未遂

友達未遂

  • 作者:宮西 真冬
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
【あらすじ】人里離れた山奥に位置し、規律に厳しいことで有名な全寮制の女子校、星華高等学校。寄宿舎には三年生が一年生と組になって、寮生活を指導するマザー制度というものがあり、三年生がマザー、一年生がチャイルドと呼び習わされる。桜子と茜、千尋と真琴の4人は、新たにマザーとチャイルドとして同室になる。ところが、寄宿舎で、洗濯物が汚されるなど、小さな事件が次々に起こる。
 
 4人がそれぞれ密かに抱えている鬱屈と、互いに抱く複雑な感情が次第に明かされていき、4人の関係がどうなるのかハラハラさせられます。濃密な心理描写、意外性に富んだ語り口で編まれた一級のサスペンスを堪能していただくために、詳細は控えたいと思いますが、読後は4人の幸福な未来を祈りたい気持ちになりました。
 
 
25位 スイレン・グラフティ/世津路章
スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居 (電撃文庫)

スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居 (電撃文庫)

 
スイレン・グラフティ(2) もすこしつづく、ナイショの同居 (電撃文庫)

スイレン・グラフティ(2) もすこしつづく、ナイショの同居 (電撃文庫)

 
【あらすじ】多忙な母親の代わりに、幼い弟妹の面倒を見ながら、家計を預かる高校生・池野彗花は、ある事情から、隣の席の問題児・庭上蓮を家に住まわせ、その漫画づくりを手伝うことになる。彗花は悪い噂とはかけ離れた蓮の漫画にかける真剣さに触れていく。
 
 蓮が誰にも見せることのなかった秘密を、成り行きとはいえ、彗花と共有する一方、いつも家族を第一に、我を張るようなことのなかった彗花が、素直ではない蓮の態度に意固地になって対抗したり、蓮の真剣さに憧れを抱きつつも、あえて蓮の漫画に対して率直な意見を呈したり、ぶつかり合いながら、絆を深めていくのが爽快です。
 2巻では、新たにふたりきりの同居生活がはじまり、同人誌即売会デビューを当面の目標にしたふたりの悪戦苦闘が描かれます。より強い信頼感で結ばれていくふたりの今後が気になります。

 24位 お絵かき禁止の国/長谷川まりる
お絵かき禁止の国

お絵かき禁止の国

 

【あらすじ】ハルは卒業を間近に控えた中学生。絵を描くのが好きなハルは、絵を見て声をかけてきたクラスメイトの人気者・アキラと一緒に漫画を描くのを楽しみにしていた。アキラのことが好きだと自覚していたハルは、ある日、アキラからキスされる。突然のキスに舞い上がりながらも、アキラの気持ちを図りかねてもいた。ところが、ふたりがキスしているところを撮った写真が、SNSで学校中に拡散されてしまい、アキラとも会えなくなってしまう。

 本書が、第59回講談社児童文学新人賞佳作に入選し、デビュー作となった長谷川まりる先生。児童文学で同性に恋する気持ちを描いたといえば、昨年末に発行された名木田恵子先生の『窓をあけて、私の詩をきいて』は、幼なじみの少女に恋するヒロインの片思いの苦しさが伝わってくる作品でした。本書は、恋する少女の一喜一憂する心を描いた恋愛小説のきらめきやせつなさが詰まった作品でもありますが、勝手に性的指向を言いふらされる行為―アウティングに等しい行為を受けたレズビアンの女の子が直面する現実を描いた作品です。

 心ない言葉を浴びせかけられ、無理解からくる言葉の棘に傷つき、周囲の人間が一瞬にして敵味方に分たれてしまうような状況が、リアルに描き出され、「どうして同性が好きだっていうだけで、こんな面倒なことになるの?」と憤りを感じてしまいますが、幸い、つらい状況を理解してくれる人々も現れ、すこしづつ平穏を取り戻していきます。

 理不尽な状況を乗り越えた先には、アキラとの恋にも決着がつきます。アキラの洩らす心情も印象的なのですが、それを受け止めてなお、暖かい愛情を示すハルの姿が、とてもまぶしく映ります。

 

 

23位 蟲愛づる姫君の婚姻/宮野美嘉
蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)

蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)

 
【あらすじ】 大国・斎(さい)帝国から、新興国の魁国(かいこく)に嫁いだ姫・玲琳。しかし、玲琳は、可憐な容貌とは裏腹に、猛毒を持つ蟲を使役し、あらゆる毒に通じ、それゆえに人々から恐れられている蠱師(こし)だった。我が道を行く玲琳の奇矯な振る舞いに、嘲りの眼が向けられるなか、魁国で、伝染病が発生。その背後に、蠱師の存在を嗅ぎとった玲琳が立ち上がる。
 
 宮野美嘉先生は、女性向けライトノベルレーベル小学館ルルル文庫からデビューし、同レーベルの主力作家のひとりでしたが、ルルル文庫亡きあとは、ガガガ文庫小学館文庫キャラブン!シリーズへと発表の場を移しながらも、独特のクセの強いキャラクターが登場する作品を発表し続けています。
 作品のほとんどがファンタジー風の世界を舞台にした、男女物のラブコメです。今回のこの作品も例外ではなく、新興国の若き王である鍠牙と、その下に嫁いできた変わり者の姫である玲琳のとことんズレたやりとりがおかしいラブコメ(というには殺伐としてますが)ではあるのですが、では、なぜ百合小説の紹介で、本作を取り上げるのかといえば、なんといっても、玲琳の度を越したお姉さま愛が綴られているからです。
 そもそも、政治や世俗の事柄には、とんと興味もない玲琳が、素直に魁国へと輿入れしたのも、姉である女帝・彩蘭の命だからこそで、夫となった鍠牙を前にしても、お姉さまこそ、この世で一番美しい、一番大好きといってはばからず、その素晴らしさを説くのを日課とし、玲琳をからかって姉の悪口を言った夫の鍠牙には、頭突きをかまして「殺すわよ」とのたまわる。
 そんな玲琳が、なぜ、そこまでお姉さまを愛しているのかを知れば、その理由には唖然とさせられるはずですが、終盤、緊迫した状況下で、明かになるその理由は、読んでのお楽しみ(ほんと、なんなんだこの姉妹は)。
 もうひとつ、どこに行ってもつまはじきにされてきた玲琳のはじめて友達になる女性、夕蓮との交流も印象的。どんなに嫌われても動じない玲琳が、はじめての友達に、すっかりペースを乱される様も見物ですが、このふたりもまた「友達とは?」と哲学的命題に目覚めてしまいそうなディープなやりとりを見せてくれます。そのほか、幸せな結婚を夢見るも、主の悪評を被ってなかば諦めてる玲琳のお付きの女官・葉歌との主従関係にも注目です。個性の濃すぎるキャラクターたちの織りなす、意外な展開も見せるミステリ仕立ての中華風ファンタジーです。
 すでに発表されている二作目の『蟲愛ずる姫君の寵愛』でも、お姉さま愛は健在で、さらに葉歌が玲琳に吐露する意外な心情、新たに側室として王宮に加わることになった姫との関係性が見物。嬉しいことに、直球の百合もあったりして。
 
 
22位 ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?/新八角
ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (電撃文庫)

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (電撃文庫)

  • 作者:新 八角
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/03/09
  • メディア: 文庫
 
ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(2) (電撃文庫)

ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(2) (電撃文庫)

  • 作者:新 八角
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/08
  • メディア: 文庫
 

 【あらすじ】荒廃した地球で料理店を営む二人、天才料理人のウカと狩人兼給仕のリコ。探求心旺盛なウカの無茶ぶりに応えてリコは今日も獲物を狩る。ふたりの絆が生み出す、絶品料理の数々。

 
 24世紀の激変した環境や生態系がもたらす食糧事情が描かれ、見たこともない食材から作りだされる料理の数々が楽しめる、SFならではの奇想天外グルメ小説です。
 少々、人使いの荒いウカと、悪態をつきつつもウカの求める食材をきっちり狩ってくるリコ。ふたりの気の置けないやりとりからは、信頼で結ばれた関係がうかがえて楽しいです。
 どちらからといえば、完全に胃袋を掴まれてるリコの方が、振り回されているような感じですが、ウカもリコと旧知の男性とのやりとりにやきもきしたり、帰りの遅いリコを心配したり、なんだかんだで愛されてます。後半、突如、勃発する痴話喧嘩(?)もおいしくいただきました。
 2巻では、ふたりのなれそめも描かれ、その絆の秘密も明かされます。ウカと意外な関係のあるエルフも登場し、1巻でも登場した天才ハッカーのカンナと<姐さん>のヤシギの関係も深まって、奇想も甘さも大増量の絶品です。
 

 

21位 空の器になにそそぐ?/綾加奈
空の器になに注ぐ? (百合小説)

空の器になに注ぐ? (百合小説)

 
【あらすじ】女子校に通う陽菜は、なんでもそつなくこなすしっかり者で、学校では頼りにされていた。ある日、陽菜は教室ではいつも独りでいるクラスメイト、支倉綿穂の意外な素顔を知る。支倉に興味を抱いた陽菜は、学校のみんなには内緒にしたまま、支倉に近づき、しだいに、妹のカナとふたり暮らしの支倉の家に入り浸るようになる。
 
 18年から、kindle上で精力的に百合小説を発表されている綾加奈先生。19年中だけでも、本書のほかに『それでも幽霊は人生を諦めない 』『私は君の味方だと囁くことしかできないけれど 』の2長編と、それぞれ小・中・大学生を主人公にした短編集を3冊発行されています。それぞれに甲乙つけがたい作品で、どれもおすすめです。
 kindle上の綾加奈先生の百合小説は、鈴蘭女子高等学校と、共学の開栄高校が舞台のものに大別されますが、本書は前者を舞台にした作品。若干、暴走気味の好意を支倉に向けつつも、自分の感情の正体がいまいち掴めないでいる陽菜と、なぜか自己評価が異様に低くて、陽菜の好意を素直に受け止めきれずにいる支倉のズレたやりとりがおかしいです。そんなふたりのもどかしい関係を軸に、陽菜にフラれたことがきっかけで、支倉と仲良くなるクラスメイトの古町蘭、陽菜の幼なじみの望月ロマも絡み、4人の女子高生たちのままならない現実も描かれたちょっと切ない青春ラブコメです。
 互いに好意を向けつつも、掛け違ってばかりだったふたりが向き合って、足並みを揃えて未来へ一歩を踏み出していくシーンが最高です。

 

 
 20位 異世界最強トラック召喚、いすゞ・エルフ/八薙玉造
異世界最強トラック召喚、いすゞ・エルフ (ダッシュエックス文庫)

異世界最強トラック召喚、いすゞ・エルフ (ダッシュエックス文庫)

 
 【あらすじ】ぼっちな女子高生、ナギは、以前から憧れだった異世界に転移。着いて早々訪れた危機に、とっさに放った召喚魔法から飛び出してきたのは、いすゞ・エルフだった。思っていたのと違う現実に頭を抱えるナギだが、勇者の少女・アラシとの出会いを通して、理想の異世界生活を目指そうと奮起する。
 
 異世界いすゞELFが無双する、しかも、いすゞ自動車容認ということで話題になった本書。ストーリーを楽しみながらいすゞ・エルフについて学べる異色の異世界ファンタジーでもありますが、十年来、ライトノベルの分野で活躍されている八薙玉造先生にとっては、デビュー作以来の純粋に女性を主人公にした作品とのことで、女の子ふたりの絆が描かれた作品です。
 トラックで無双するなんて恥ずかしいナギにとって、みんなのために大槍を駆使して敵と闘うアラシは理想の勇者そのもの。ところが、アラシの意外な弱点を知ったことがきっかけで、互いのコンプレックスをさらけだせる唯一の相手になります。
 自己評価が低くて、対人関係が苦手という共通点をもつふたり。友達になった当初は、とてもぎこちなかったけれど、互いに相手の役に立とうと奮闘しながら友情を深めていく姿に、おかしくも暖かい気持ちにさせられます。
 やがて、勇者の少女は、大切な少女のために、戦うことの意義を見出し、戦いたくない少女は、不器用な勇者の少女のために、自分なりの戦い方を見出していく。そんな二人の姿が感動的です。
 
 
19位 君と漕ぐ/武田綾乃
君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)

君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)

  • 作者:武田 綾乃
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/01/27
  • メディア: 文庫
 
君と漕ぐ2 :ながとろ高校カヌー部と強敵たち (新潮文庫nex)

君と漕ぐ2 :ながとろ高校カヌー部と強敵たち (新潮文庫nex)

  • 作者:武田 綾乃
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 文庫
 
 【あらすじ】両親の離婚を機に、東京から埼玉の北西部へと引っ越してきた、高校一年生の舞奈は、地元の川でひとり、カヌーに乗っていた湧別恵梨香と出会う。カヌーに興味を持った舞奈は、恵梨香を誘って、ながとろ高校カヌー部に入部する。長年ペアを組んで活動してきた先輩の希衣と千帆、あわせても4人の小さなカヌー部が動き出す。
 
 『響け! ユーフォニアム』シリーズやその派生作品、及び『その日、朱音は空を飛んだ』で、すでに百合ファンからも注目されている武田綾乃先生の最新シリーズです。
 『響け! ユーフォニアム』と同様、高校生の部活動を通して描かれる人間模様が魅力的な本作。一度、対人関係で躓いた経験から、カヌーだけが友達だった恵梨香と、天真爛漫な性格で、ちょっと警戒心の強い恵梨香の懐にもすっと入っていく舞奈との微笑ましい関係も描かれる一方、千帆とふたりで勝利することに執着する希衣と、すでに自身の限界を認めてしまった千帆はすれ違い、親友とペア、ふたつの立場に挟まれて燻る希衣の心理描写は特に濃厚。抜きんでた才能を持つ恵梨香の加入で、この先輩ふたりの関係も変わっていきます。「君と漕ぐ」というたった四文字に込められた想いが印象的です。
 ライバルたちも登場し、様々な人間関係も描かれていくなか(神田・堀ペアの関係好き)、2巻のラストでは、それまでカヌーに乗れば並ぶ者がなかった恵梨香に、知らなかった感情を自覚させる<孤高の女王>蘭子との関係がどのようなものになるかとか、冒頭に示される恵梨香と組んでオリンピックに出場しているのは誰なのかとか、続刊が気になるシリーズです。
 
 
18位 ノワールをまとう女/神護かずみ
ノワールをまとう女

ノワールをまとう女

 
【あらすじ】企業の炎上を人知れず沈静化させるのを生業としている西澤奈美。新たな案件の解決に乗り出した奈美は、潜入した市民団体と恋人の雪江に繋がりがあることを知る。これは、果たして、偶然なのか。
 
 本年度の第65回江戸川乱歩賞受賞作。乱歩賞で女性どうしの関係を描いた作品と言えば、女子高生の恋愛を描いた多岐川恭の『濡れた心』が浮かびますが、これが第4回受賞作品なので、実に60年ぶり。
 企業の炎上を鎮めるための裏工作を進めつつ、行きつけの韓国料理店の女性店主が自殺した事件の隠された事情を探っていく奈美の姿がメインで描かれています。合間に雪江とのなれそめや、デートの様子なども書かれていますが、奈美と雪江の関係は、添え物程度の描写に止まらず、物語の展開上、重要な意味を持っています。愛しあいながらも、互いに譲れない信条のために、ただ恋人同士ではいられなくなってしまうふたりの結末には、胸が痛みます。
 男どうしの熱い関係を描くのは得意なハードボイルドの世界に、女どうしの関係性をぶち込んで、新風を吹きこんだ本作。早川書房が「百合SF」を前面に押し出した年度に、女性どうしの関係を描いた作品が、60年ぶりに乱歩賞を獲るって、なかなか愉快な符号じゃないでしょうか。次は60年後といわず、当たり前のように百合ミステリが乱歩賞を獲るような時代になるとよいですね。
 
 
17位 キキ・ホリック/森晶麿
キキ・ホリック

キキ・ホリック

  • 作者:森 晶麿
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/31
  • メディア: 単行本
 
【あらすじ】若宮波留花をクラスメイトのイジメから救ってくれた同級生の蘇芳キキ。それ以来、キキが管理する温室で過ごすふたりの時間に心を浮き立たせる波留花。だが、その前に現れたキキの妹、カラは告げる。姉が叔父を殺したと。
 
 第1回アガサ・クリスティ賞を受賞してデビューされて以来、精力的に作品を刊行されているミステリ作家の森晶麿先生が、編集者のすすめで初めて書いたという百合作品です。
 物語は、波留花の視点で進んでいきますが 家庭では冷淡な母親と過干渉で暴力を振るう父親に囲まれ、学校ではイジメに遭うという閉塞的な状況で、手を差し伸べてくれたキキに否応なく惹かれていく波留花、イジメを止めて以来、波留花の管理人を自認し、愛でるキキ。ふたりの甘いやりとりに、波留花に絡んでくるキキの妹、カラの姉に相当こじれた想いを抱いていることを滲ませる言動がコミカルに描かれた序盤は、陰鬱な物語の中で輝きを放っています。
 波留花がふたたび閉塞的な状況に囚われはじめるなか、キキへの想いが加速していくとともに、連続殺人事件が起き、キキの犯行への関与が疑われたり、サスペンスが増してきます。ジャンルのあわいをスリリングに駆け抜けたその先にある光景は、きっと心に残ると思います。
 耽美でビザール、妖しい魅力を放つ作品です。
 
 
16位 大進化どうぶつデスゲーム/草野原々
大進化どうぶつデスゲーム (ハヤカワ文庫JA)

大進化どうぶつデスゲーム (ハヤカワ文庫JA)

 
大絶滅恐竜タイムウォーズ (ハヤカワ文庫JA)

大絶滅恐竜タイムウォーズ (ハヤカワ文庫JA)

 
【あらすじ】星智慧女学院を、突如、襲った巨大なネコ型生物。生き残った生徒たちに、未来からやってきたというAI生命は、進化史が改ざんされため、人類が誕生せず、猫が地球の覇者となったのだと告げる。かくして、ネコ型生物の進化を阻止し、人類が繁栄する未来を取り戻すため、女子高生18人は、分岐点となった800万年前のサバンナに送り込まれた。極限状況下で絡み合う彼女たちの様々な感情を濃密に描いたハード百合SF。
 
 初単行本『最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)』に収められた作品や、SFアンソロジー『NOVA 2019年秋号 (河出文庫)』に収録された「いつでも、どこでも、永遠に。」では、身体改変などの過激なモチーフを用いて、もはやヒトの領分を超えた強感情が、宇宙規模の変革を促すという壮大なスケールの百合作品を書かれている草野原々先生。
 本書では、あいかわらず過酷な環境に置かれてはいるものの、女子と女子の間で派生する感情を丁寧に拾い上げた、正統派(?)の百合小説になっているのが魅力です。しかも、その女子高生が18人もいれば、そこから派生しうる関係性は無限といってもいいわけで、冒頭に掲げられた登場人物相関図に添えられた関係性をみるだけでも、「友人未満」「まぁ友達」「大好き」「崇拝」「良きライバル」「親友」などといった言葉が踊ります。まるでありとあらゆる関係性を描き出してやろうとしているかのようなSF作家らしい過剰さも感じられます。個人的な好みでいえば、なかでも幾久世と千宙のふたりの関係性がとても好きなんですが、百合好きなら間違いなく琴線に触れる関係性が見つかるはず。
 
 本書の続編である『大絶滅恐竜タイムウォーズ』も刊行されましたが、キャラクターこそ共通しているものの、語り口さえ変わって、お話はどんどんとんでもなくなっていき、思いもよらない地点に辿りつく、カオスなSFでした。前作からすると、「どうしてこうなった?」と思わされるような続編ですが、宮澤伊織先生との対談「百合が俺を人間にしてくれた【2】」で言及される「弱い百合(weak yuri)」という概念を補助線としてみると、興味深いかもしれません。

 

 

15位 明日の世界で星は煌めく/ツカサ
明日の世界で星は煌めく【電子書籍版限定特典SS付き】 (ガガガ文庫)
 
【あらすじ】屍人が溢れかえり、人類が終焉を迎えようとする世界で、父親の遺した「魔術」によって、生き残った少女・由貴。屍人の発生から一か月が過ぎ、すっかり人間の姿を見かけなくなった街で、由貴はひとりの生存者を助ける。それは、ずっとイジメられてきた由貴が、一週間だけともに過ごした唯一の友達・帆乃夏だった。姉を探しているという帆乃夏とともに、由貴は安全な屋敷を出る決心をする。
 
 2016年発表の『ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)』で、終末を迎えた世界を舞台にした、ふたりの少女の逃避行を描いていた、ツカサ先生のポストアポカリプス百合の新シリーズです。
 孤独な少女が、ただ一人、友人と認めた少女と再会し、一緒に屍人で溢れかえる世界に立ち向かうという設定からして、すでにエモいんですが、ただ仲が良いというだけでない由貴と穂乃果の関係を多面的に描く筆が冴えています。
 もともと、転校を繰り返してきて人の懐に入り込むのも得意な帆乃夏が示すあけっぴろげな好意に、人づきあいに慣れていない由貴は、距離感を慎重に図りつつ、応えていく。そのふたりのやりとりはときに微笑ましくもあるのですが(そういうところは、女子高生たちのなにげなくちょっぴりおかしい日常を最高に魅力的に描くむっしゅ先生のイラストがハマってます)、決してなあなあの関係ではないところが魅力です。
 その魅力は、ふたりの出会いのエピソードにも顕著に表れています。帆乃夏は一度だけ、級友たちから理不尽な疑いをかけられた由貴を助けますが、転校まで時間がないこともあり、あえていじめをなくそうと行動にでたりしません。由貴もまた帆乃夏に頼ることを潔しとせず、帆乃夏の判断を受け入れます。そのときの別れに際して下すふたりの決断もシビアです。
 大事な決断を下す際には、自分の判断を押し付けず相手の意思を尊重する、互いに信頼を寄せながら、一定の距離を取り、対等な立場であろうとする。このふたりの関係をあえて言い表すならば、戦友という言葉が似合うような気もします。
 実際、屍人たちを相手に戦う後半では手に汗握るアクションも楽しめますが、屍人とはなんなのか、帆乃夏は姉に再会できるのか、今後、ふたりがどんな死線をくぐりぬけていくのかが楽しみなシリーズです。
 
 
 14位 最強の傭兵少女の学園生活 ―少女と少女は邂逅する―/笹塔五郎
【あらすじ】シエラは幼いころ自分を拾ってくれたエインズと父子同然に育つ。最強の傭兵と目されるエインズともに戦場を駆け抜け、その戦闘能力は父に並ぶほどに成長した。しかし、シエラが15歳を迎えて、エインズは傭兵引退を宣言。戦いしか知らないシエラを心配したエインズは、シエラを学校へ入れる手筈を整える。学校に入ったシエラは、周囲から遠巻きにされている貴族の娘・アルナと友達になっていく。だが、アルナを狙う何者かの影が……
 
 悪目立ちしないよう本気を出さないよう言われていたにも関わらず、自分の強さに無自覚なために、シエラが数々の騒動を引き起こしていくのが愉快です。そんな常識とは縁遠く、いたってマイペースなシエラに振り回されつつも、世話を焼いてあげるアルナ。顔にはあんまり出ないけど、アルナには甘えん坊になるシエラ。そんな、ふたりの姿が微笑ましいです。
 しかし、訳ありなアルナは、複雑な思いを抱えていて、そのため、すれ違いも起きてしまいます。シエラを大切に思うからこそ拒絶してしまうアルナと、対人経験のなさが裏目に出て、どこまで踏み込んでいいのかわからなくて途方に暮れるシエラの姿は、とてもせつないですが、それを乗り越えて絆を育んでいく姿は感動的です。あんまり小道具の使い方が巧みだったために、クライマックス、百合なのに「お父さーん」と叫びそうになりました。
 命を奪い合う傭兵稼業に明け暮れていたけれど、大切な人を守るために力をふるうことを覚えるシエラ。シエラに人を思う心を与えてくれたアルナもまた、シエラに背中を押され、まとった孤独を脱ぎ去ろうとし始める。そんなふたりの関係が素晴らしい本書。原型となる<小説家になろう>版では、第三部まで公開されていますが、ぜひとも書籍版でも続刊を希望したいところです。
 
 
 13位 百合お嬢様の優雅じゃない魔法少女生活/あらおし悠
【あらすじ】通っているお嬢様学園では、学園のアイドルとして崇められている桃だが、実は魔法少女が大好きなオタク。桃と学園での人気を二分する運動神経抜群のクラスメイト、橙果のことは気になる存在だったが、互いのファンが壁となって、近づけずにいた。
 そんな、ある日、桃が粘液状の化物に襲われている少女を助ける。魔法界からやってきたというメロと名乗るその少女によれば、化物は蜜魔と呼ばれ、女の子を発情させ性欲の虜にしてしまうのだという。メロから高い適性を認められた桃は、人間界に逃げ出した蜜魔を捕まえる魔法戦士になって欲しいと頼まれる。しかし、蜜魔に取り憑かれた女の子を救うには、性行為で性欲を満たしてあげる必要があるというのだ。女の子とエッチできるのは魅力だけど、理想の魔法少女像とはかけ離れた活動内容に渋りつつ、メロに協力する桃。その矢先、橙果が襲われているのを発見する。おまけに、活動を邪魔するもう一人の魔法少女まで現れて……
 
 官能分野で、百合作品をコンスタントに発表し続けてくれている大変にありがたい作家・あらおし悠先生の最新作。ちょっといいかげんなメロに振り回されつつも育まれていく桃との友情や、正体を隠したまま橙果と結ばれることになった桃の葛藤や、そのふたりの関係を軸にしつつ、たっぷりと官能描写が楽しめる、いつも通り期待を裏切られることのない作品です。
 で・す・が、
 本書のクライマックスでは、1対1で育む恋愛ものとも、1対多のハーレム展開とも違った関係でつながる官能描写も描かれていて、あらおし先生の底知れぬポテンシャルに大興奮の一冊でした。官能百合が初めてという方はもちろん、読み慣れてるよという人にもおすすめしたい作品です。
 今年、あらおし先生は、奴隷関係からはじまる官能百合『百合ラブスレイブ』の続刊、『百合ラブスレイブ凛 好きへの間合い』も発表され、気持ちより先に行動がきてしまう官能小説ならではの百合展開に、スポ根風のストーリーも楽しめる作品でした。また、あらおし先生以外にも、二次元ドリーム文庫からは、酒井仁先生による初の百合作品『お嬢様とメイドの百合な日常 ~白いお屋敷のラプンツェル~』も刊行されており、二次元ドリーム文庫から新たな展開があるのか、他レーベルにも飛び火する可能性も含めて、今後も官能小説レーベルの動向に注目していきたいと思います。

 

 

12位 なめらかな世界と、その敵/伴名練
なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

 
 本書は、伴名練先生の9年ぶり二冊目の単行本となるSF傑作集です。寡作ながら、一編一編のクオリティの高さは、ほとんどの作品が各種アンソロジーに採られていることでも保証済。SFマガジン10月号では、本書の発刊を記念して、SF界の錚々たる面々が、最新作「ひかりより速く、ゆるやかに」を除く全作品をレビューした「伴名練総解説」を寄せてます。短文ながら、的確に各作品の魅力を拾い上げる書評で、機会があれば併読されることをおすすめしたいです。
 本書には「美亜羽へ贈る拳銃」を除けば、どれも百合SFといって差し支えない作品が並んでいます。以下、一編づつ簡単にご紹介します。
 
「なめらかな世界と、その敵」
人々が“乗覚”という力を持ち、並行世界を自由に行き来することによって人生を謳歌しているなか、事故で“乗覚”を失い、ひとつきりの現実に生きる少女。その少女のために幼なじみの女の子が奔走します。ラストの選択にはハッとさせられます。
 
ゼロ年代の臨界点」
なんとSF評論の形をとった小説です。その内容は、日本SFの黎明期に、三人の女性作家が残した足跡を辿るというもの。作品内容の要約やその及ぼした影響、注釈を通じて、直接描写することなく、三人の濃い関係性を浮かび上がらせていくのに驚かされます。
 
ホーリーアイアンメイデン」
 妹から姉に宛てた五通の書簡の形で綴られる作品。ふしぎな能力を持つ姉に抱く惧れ、愛憎入り乱れる心情が綴られていくうちに、浮かび上がってくる恐るべき企み。姉との関係に身を捧げた妹の決意が、姉を含むこの書簡を読み終えたすべての者の胸にまざまざと突き刺さることでしょう。
 
「シンギュラリティ・ソヴィエト」
 ソ連アメリカが開発した超高度AI間の歴史改変競争を背景に、アメリカの工作員の男と、ソ連側の女性の緊迫したやりとりを描いた密室劇なのですが、わずかながらに触れられた正体不明の感情が、戦慄すべき意外な結末とともに印象に残ります。
 
「ひかりより速く、ゆるやかに」
 一本の新幹線を襲った未曽有の事態が引き起こす悲喜劇や社会的影響を、乗客のひとりである天乃と幼なじみの“僕”こと速希、天乃とは腹違いの姉妹である叉莉との関係を中心に描いています。柄は悪いけど、天乃にはメロメロな叉莉のキャラクタや、速希の抱える天乃に対する複雑な想いが印象に残ります。
 この作品に施されたある仕掛けについては、ライターの将来の終わり氏による書評を参照いただければと思います。
 
 以上、着想、洗練された語り口、鮮やかな結末が優れた珠玉の作品集です。

 

 

11位 Vチューバーだけど、百合営業したらドハマリした件/みかみてれん
【あらすじ】 「カッコイイ」と呼ばれるより、「かわいい」と言われたい。高身長と整った顔立ちゆえに叶わない願いを叶えるためVチューバ―橙猫フーカになった女子高生の楓花。ところが、現実にはゲーム配信で圧倒的な強さを発揮したりして「修羅」などと呼ばれる始末。そんなある日、林原リリと名乗るVチューバ―から、コラボ配信の誘いが。リリの配信を見た楓花は、そのあまりのかわいさに、秘訣を盗んでやろうと考え、承諾する。だが、打ち合わせの場に現れたリリは、生身からしてかわいい女の子だった。才能の差を見せつけられて心が折れかかる楓花だが、リリの熱心さに負けて、コラボ配信をはじめる。リリが百合営業を企画のコンセプトとして提案し、乗っかることにした楓花だったが……
 
 みかみてれん先生といえば、『魔少女毒少女 リリスとサラの情炎行』というあまりにも一途に捧げられる愛情と、それに対する複雑に入り乱れる想いを描いたビターな百合小説が、私、大・大・大好きでして。他の商業作品では、百合以外の作品を主に発表されてきたみかみ先生ですが、同人活動では、個人レーベルのみかみてれん文庫を立ち上げられ、精力的に百合小説を発表されてきました。なかでも、『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』(以下「百日百合」)は、Amazonライトノベル・ランキングで1位、部数は1万部を超え、ビブリオバトルに取り上げられた本として、国営放送でも紹介されるなど大反響を呼びました。
 その「百日百合」の登場人物たちも顔を覗かせたり、他作品とも世界観がクロスしていたりする本書。「かわいい」と言われたい楓花と、「カッコイイ」女になりたかった璃々子、互いに自分にないものを持った理想の自分と出会い、いろいろと正反対のふたりが、互いの欠落を埋めていくような関係に発展していくのが素敵です。
 さっぱりした性格で、恋愛とか意識したこともないぶん、平気で百合営業もできちゃう、ある意味、無敵な楓花に、最初から楓花のことを意識しまくりながらも、いろいろ経験を重ねてきたぶん臆病にもなって踏み込めないリリの振り回されてしまう様が、ちょっぴりせつなくもコミカルに描かれています。Vチューバー、ゲーム実況、百合の三題から導き出される、思いがけなくも最高のエンディングが待ってます。さらに、『ゆりぐらし』などで知られる百合漫画家のくるくる姫先生による挿画、リリとフーカのショート漫画も楽しめる贅沢な一冊です。
 さて、2020年には、前述の「百日百合」が、GA文庫の一冊として発行されることになり、ダッシュエックス文庫からも新シリーズが開始と、みかみ先生がふたたび商業で百合小説を出されるというニュースが、先日、発表されました。19年は、二年半ぶりに『安達としまむら』の最新刊が刊行され、アニメ化まで発表されましたが、女の子どうしの友情やイチャイチャや巨大感情まで描かれているわりに、ラブコメは空白地帯になっているライトノベルの分野に、百合ラブコメの大本命が登場することで、いったいどんな旋風が巻き起こるか、いまから非常に楽しみです。
 
 
10位 カインの子どもたち/浦賀和宏
カインの子どもたち (実業之日本社文庫)

カインの子どもたち (実業之日本社文庫)

 

【あらすじ】死刑因の孫、立石アキは、同じく死刑因を祖父に持つ新進気鋭のジャーナリスト泉堂莉菜から協力を申し込まれる。ふたりの祖父が犯人とされるそれぞれの事件、同一人物の犯行である可能性が出てきたというのだ。ともに過去の事件を調べていくうちに、ふたりは愛しあう仲になっていった。

 
 1998年、『記憶の果て』でデビューされた浦賀和宏先生は、ミステリを基調にしつつ、SF的な趣向を取り込んだジャンルのお約束やタブーにとらわれない作風、青春期の繊細さと暗黒面を抉り出すリアルな描写から、コアなファンを獲得しましたが、2001年発行の『彼女は存在しない』は、2010年代初頭にベストセラーとなり、一躍、話題の作家となりました。
 浦賀先生は、実は、以前も百合ミステリを書かれていて、そちらはネタバレになってしまうのでタイトルが挙げられないジレンマがあったんですが、今回の作品は、ネタバレを気にせず、紹介できてうれしい限り。百合好きにも勧めたいディープな感情が描かれた作品となっています。ツイストの効いた最後まで先の読めない展開の先に見えてくる光景は、ミステリファンにも百合好きにも衝撃を与えてくれるでしょう。
 
 
9位 紅蓮館の殺人/阿津川辰海
紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

 
【あらすじ】高校生探偵の葛城と、その助手である田所は、学校の合宿先を抜け出して、近隣の山中にある、高名なミステリ作家が住まう落日館に向かう。しかし、折悪しく、発生した山火事に追われ、家の住人やほかの避難者たちとともに落日館に閉じ込められてしまう。そして、切迫する状況の中で、住人のひとりが、無残な死体となって発見される。館が炎に包まれるまでに、事件を解決し、脱出することはできるのか。
 
 2017年に『名探偵は嘘を吐かない』でデビューした新鋭のミステリ作家、阿津川辰海先生の第3作目、毎年恒例年末のミステリランキングでも、高い評価を得た作品です。
 生い立ちから嘘を憎み、欺瞞を暴きたてずにはいられない葛城と、かつては何度も事件を解決したことのある女性、飛鳥井光流、新旧の名探偵が登場。館で起こった死亡事件を殺人と主張し、犯人を捜そうとする葛城と、事故であると主張し、脱出経路の探索を最優先とする飛鳥井、その対決が、本書の読みどころのひとつ。
 実は葛城の助手である田所は、幼いころ、飛鳥井と一度出会っていて、田所が名探偵に憧れたのも目の前で颯爽と殺人事件の謎を解く飛鳥井の姿を見たからでした。しかし、再会した飛鳥井は、事件には興味を示そうともせず、かつての名探偵の面影は失われてました。では、なぜ飛鳥井は変わってしまったのか。その理由が、事件と並行して描かれる飛鳥井の過去にあります。分量が割かれた過去パートでは、かつて、助手の女性とともに、飛鳥井が事件解決に当たっていた日々が描かれます。探偵と助手という関係で結ばれたふたりの絆と想い、そして、迎えた苦い結末。半身を失った飛鳥井の「彼女が嫌いだ」というリフレインがせつなく響きます。
 周到に計算されたミステリである本書のこと、この過去のエピソードも重要な意味を持ってくるわけで、オーソドックスな犯人当てを軸に、豊富なアイディアが詰め込まれた本格推理であり、名探偵とは、その存在意義はなにかというテーマ、ふたりの女性の関係性が一丸となって構築された本書はとても読み応えのある作品でした。
 本格推理と名探偵(の存在証明やら苦悩やら)と百合をこよなく愛する私にはこれ以上ないご褒美でした。
 
 
8位 ネクロマンサー少女/天乃聖樹
ネクロマンサー少女 1 (ヒーロー文庫)

ネクロマンサー少女 1 (ヒーロー文庫)

 
【あらすじ】『業火の王』との最終決戦。ネクロマンサーの少女・ネネは、仲間の英雄たちに裏切られ、親友のローズとともに戦場に残される。ネネを庇って倒れたローズは、魂を刈り取られ、消滅させられる。ネネは、英雄たちに復讐し、ローズを死の運命から救い出すために、一世一代の禁術を用いて2年前に戻る。アンデッドの少女・フランを使い魔にして、死体さえあれば最強のネクロマンサー少女が運命を変える戦いに挑む。
 
 個性豊かな4人の少女たちが仲睦まじく冒険を繰り広げる『十歳の最強魔導士』を刊行中の天乃聖樹先生の新シリーズ。
 非情に徹しようするネネと、そんなネネの調子を狂わせてしまうネネ大好きなフランとのかけあいも楽しく、二周目の利点を活かして、水面下で動きながら、勇者たちに嫌がらせのジャブを叩き込んでいくのが痛快です。
 少しでもローズを死の運命から遠ざけるため、会いたい気持ちを押し殺して、誰にも真実を打ち明けず、失敗の許されない使命の重圧にひとりで耐えようとするネネですが、ローズとふたたび出会ってしまったことで、崩れそうになる決意を必死に押しとどめようとするネネの姿が痛ましく、せつないです。
 しかし、事情を知らないなりに、ネネの苦悩を察し、支えようとするフランとローズ。苦難の果てに、ネネとふたりの間に、新しい絆が結ばれていくのが感動的です。3人は運命を変えることができるのか、今後が非常に気になります。
 
 19年は、本書のほかに前述の『十歳の最強魔導士』や男女物のラブコメを含めて7作も出版され、大活躍の天乃先生ですが、その中の一冊『君は誰に恋をする 』(LINE文庫)は、互いの恋を応援しあう約束をした高校生の男女が惹かれあっていく様子が描かれている作品。ですが、実は百合目線で読んでも、報われない思いの切なさと、好きな人を取られないためには手段を選ばない情念の深さに打たれると思います。
 
 
 7位 女だから、とパーティを追放されたので、伝説の魔女と最強タッグを組みました/蛙田あめこ
【あらすじ】「女だから」という理由で、パーティから追放されたターニャは、三百年の眠りから目覚めた伝説の魔女・ラブラスと出会う。ラプラスに実力を認められ、最上級職の魔法剣士にクラスチェンジしたターニャは、パーティを見返してやるために、冒険者たちが集うランキング戦に出場することを決意する。
 
 オーバーラップWEB小説大賞奨励賞を受けて発行された蛭田あめこ先生のデビュー作。魔法剣士ターニャと伝説の魔女・ラプラスが、男性ばかり優遇される冒険者業界に殴り込み、女だからという理由で押し付けられる理不尽を、ことごとくはねのけていく、胸のすく活躍を描いた作品です。
 蛭田先生は、前年8月に発覚した、入試を受けた女子学生に一律減点措置を取っていたという、東京医科大学不正入試事件に触発されて書き始められたそうですが、女性の生きづらさを助長する現実の諸問題を取り込みつつ、ターニャたちの活躍が、それまで女性たちを縛りつけていた価値観から解放していく、痛快無比のエンタテインメントに仕上げられました。
 もとから人並外れた力を持つ魔女なのに、三百年間も眠ってたせいで世俗に疎いラプラスと、それに比べたら常識人なターニャ。ラプラスがやらかしてはターニャがツッコんだり、ターニャが常識だと刷り込まれてきたものが決して当たり前ではないことを、世間からどう見られるとか時代の趨勢に捉われないラプラスに指摘されて気づかされたり、女ふたりの道行きはとてもにぎやか。
 ところで、ラプラス、けっこうキス魔なんですけど、手軽に魔力が注入できるからとはいえ平然とキスしてくるラプラスに、ターニャはちょっとドギマギしつつも、特に抵抗なく受け入れてたりして、キスされても、女どうしなのにとか、自分たちの関係に思い悩んだりというのがなくて、無自覚というか天然カップルっぽいとこが良いです。そんな二人の関係はというと、目的を同じくする仲間、あるいは戦友ではあるけれど、復讐相手はラプラスにとっては、特に思い入れもない人物なので、それだけとも言い難いし、馬があって仲が良いのだから友達といえば友達だけど、キスはするし、だからといって恋人というわけもない。そういったカテゴライズをする以前に、ターニャとラプラスなんだなという感じがしました。
 あと、このふたりの関係も面白いんですが、もう一組の関係の行方も注目です。途中からターニャたちに合流するナディーネと、敵として現れる、平気で男に媚びる世渡り上手なキャサリンのふたり。詳しくは読んでいただくとして、女が女に落ちる瞬間の破壊力凄い……とだけ言っておきます。
 
 すでに出ている2巻では、ラプラスの因縁の相手と対峙することになりますが、厄介な相手に苦戦しつつも、より強く結びついていくターニャたちの活躍が描かれています。なんといってもターニャがラプラスにとってどんな存在なのか、ラプラスが心情を吐露するシーンに感銘を受けました。このふたりが出会えて本当に良かったと心の底から思えます。
 
 
6位 世界樹の棺/筒城灯士郎
世界樹の棺 (星海社FICTIONS)

世界樹の棺 (星海社FICTIONS)

 
【あらすじ】王城に仕えるメイド、恋塚愛埋(こいづかあいまい)は、人間と全く見分けがつかない<古代人形>が暮らす街を内包する<世界樹の苗木>の調査することになり、考古学に詳しいハカセとともに出立する。愛埋たちは、世界樹の中の街で、謎の棺を運ぶ少女たちと遭遇する。彼女たちの暮らす館に招かれるが、そこで連続殺人事件に巻き込まれてしまう。
 
 SF界の大御所・筒井康隆ライトノベルに挑戦したという触れ込みで話題になった『ビアンカ・オーバースタディ』。自主的に書いたその続編で新人賞を受賞し、筒井御大にも認められてデビューしたという異色の経歴の持ち主である筒城灯士郎先生の2作目の作品です。
 1作目の『ビアンカ・オーバーステップ』は、筒井作品のテイストを再現しつつ、ちょっぴり姉妹百合の風味もある作品でしたが、本書は冒頭1ページ目から、強烈に百合を感じさせるシーンからはじまります。といっても、これはまだ序の口で、本書は恋塚愛埋が連続殺人の謎に直面するパートと、王国の危機に際して、王女のモコと愛埋が繰り広げる冒険を描くパートに分かれているのですが、後者のパートでは、互いに想いあう主従の恋模様が真正面から描かれていて、それだけで一編の百合小説が成立しています。そのほか、全編、様々な女性どうしのつながりが散りばめられています。
 連続殺人事件の真相を巡って二転三転する推理のゆくえが描かれる本格ミステリでもあり、<古代人形>の存在が鍵を握る特殊設定ミステリならでは論理展開には、膝を打つこと請け合いです。
 ふたつのパートは、ともに恋塚愛埋を中心に据えつつも、果たしてどのような繋がりがあるのかは最後まで分かりません。しかし、殺人の謎が解かれ、王国の辿る運命と、モコと愛埋の恋の物語が、ひとつの結末を迎えたとき、世界の真実は明かになり、謎が氷解していく快感が味わえるとともに、よりいっそう忘れがたい百合小説として完成するのです。

 

 
5位 私の推しは悪役令嬢。/いのり。
【あらすじ】零は、ある乙女ゲームのヒロイン・レイに転生するが、そこは、零の推しの悪役令嬢・クレアの存在する世界だった。レイは、本来、攻略対象の王子たちには脇目も振らず、クレアを全力で愛でる日々を送る一方、ゲームの世界ではクレアがどんな運命を辿るか知っているレイは、密かに策略を巡らすのだった。
 
 2017年に創刊された百合専門の電子書籍レーベル<GL文庫>から発行された本作。昨今、異世界に転生したり、召喚されたりするお話が枚挙に暇がないほど書かれていますが、中でも乙女ゲー世界のヒロインや悪役令嬢などに転生したりするものも一定数存在し、多様な作品が生まれています。これだけあれば、ヒロインがヒロインを落とすような作品が、1冊くらいあってもいいよねと思っていたのですが、その願いを本書が叶えてくれました。
 前半では、クレアが悪役令嬢らしくレイに精一杯意地悪しようと頑張るのですが、クレアが大好きなレイからは、それらがことごとくご褒美と解釈され、苛めてるはずのクレア(とその周囲)が、奔放なレイの言動にどん引くというシークエンスが、たいへんテンポ良く書かれていてすいすい読めます。
 軽妙なやり取りをしながらも、ともに過ごすうちに見せ始めるクレアの感情の揺れ、思わぬライバルの出現に、クレアに対する想いを新たにしていくレイ。少しづつ変化していくふたりの関係からは目が離せません。
 それに加え、ふたりを取り巻く世界について深く掘り下げてあるのも本書の魅力です。貴族支配に陰りが見える王国の事情を背景に、腐敗した貴族、敵対勢力の暗躍、平民運動の激化などが、レイとクレアのみならず、周辺の登場人物たちをも巻き込んでいきます。登場人物たちのそれぞれの愛の形が示されたり、封建的で、性的マイノリティに対する理解など望めない世界で、偏見や抑圧に抗ったり、激動する時代の流れの中で展開する濃厚なドラマは非常に読みごたえがあります。
 迫りくるクレアの運命の日、クレアの幸せだけを願うレイの策略は実を結ぶのか。ぜひ、その目で確かめていただきたい、ヒロインが悪役令嬢に捧げた愛を高らかに謳いあげる一大叙事詩です。
 

 

 4位 処刑少女の生きる道(バージンロード)/佐藤真登
【あらすじ】ときおり異世界から迷いこんでくる日本人。ふしぎな力を持ち、かつて世界に災厄をもたらした彼らを秘密裏に葬り去るのが、処刑人の仕事。処刑人の少女・メノウは、いつもどおり日本人の少女・アカリの処分を決行。しかし、確実に仕留めたはずの彼女は何事もなかったかのように復活してしまう。現状、アカリを殺す術がないことを悟ったメノウは、その方法を探すため、事情を知らないアカリを引き連れて旅にでる。
 
 GA文庫大賞《大賞》の座を7年ぶりに射止めた話題作。目を惹く設定に、作りこまれた世界観、際立ったキャラクターたちの軽快な会話に、駆け引きも楽しいアクション、読み進むほどに明らかになっていく緻密な構成に感嘆し、頁をめくる手が止まらなくなる、ただただ純粋に面白いエンタメ作品としても、おすすめしたい作品です。
 佐藤真登先生といえば、ヒーロー文庫より『嘘つき戦姫、迷宮をゆく』が刊行中。『処刑少女~』とともに、久しぶりに5巻も出ました。まったく違う性格の持ち主ながら、固い絆で結ばれていくリルとコロのコンビを中心に、女性陣の友情や連帯などが十重二十重に取り囲む、女性どうしの結びつきが堪能できる作品で、こちらも大好きなシリーズなのですが、本作ももちろん、メノウを中心に、愛、恋、友情のようなカテゴリには収まりきらないような、ファンタジーならではのスケールの大きい、女どうしの巨大感情が渦巻いてます(はっきりとカテゴライズできそうなのは、某登場人物間の「あいつは敵」という認識ぐらいでは)。ちなみに、本書で私がいちばん好きなセリフは「せんぱい、いがい!みんなしね!!」です。
 世界の謎が少しづつ明らかになっていくたびに、全貌が、メノウとアカリの結末がますます気になってくる、いま最も続刊の待ち遠しいシリーズです。
 

 

3位 コールミー・バイ・ノーネーム/斜線堂有紀
コールミー・バイ・ノーネーム (星海社FICTIONS)

コールミー・バイ・ノーネーム (星海社FICTIONS)

  • 作者:斜線堂 有紀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
【あらすじ】大学生の愛は、ごみ捨て場に捨てられていた美しい女、琴葉を一晩泊める。その後、琴葉が同じ大学に通う学生だと知って友達になろうとした愛だが、琴葉はそれを拒絶。かわりに恋人として付き合うこと、そして、自分が改名する前の本当の名前を当てられたら望み通り友達になるといわれ、その賭けに乗る。
 
  第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞」を受賞した『キネマ探偵カレイドミステリー 』でデビューされて以来、ライト文芸の分野で活躍されている斜線堂有紀先生の百合長編第一作です。
 謎めいた琴葉に振り回され、なかば無理やりに恋人とされながらも、愛が律儀に恋人って何するんだろうと試行錯誤を始めたり、それを見守る友人たちとの関係などが微笑ましいですが、愛の気持ちが次第に琴葉に傾斜していくにつれ加速する高揚感と裏腹に、真意の見えない琴葉を前にして感じる不安や葛藤が描かれていて、恋愛小説の醍醐味を味わえます。
 いまさら友達にもなれず、琴葉との関係に溺れていく愛に、訪れる決定的な転機。改名した理由、琴葉の口にする「証明」「呪い」「宿命」とは、どのような意味を持つのか。本心を知るには琴葉というひとりの女性の謎を解かなければならない。切実な理由に突き動かされて、関係が終わると知っていても、ふたりの賭けを遂行していく愛の姿は痛ましく、浮かび上がってくる琴葉の絶望は筆舌に尽くしがたい。
 希代の推理作家・連城三紀彦を彷彿とさせる逆転の発想が圧巻の“名前当て”ミステリであり、女どうしの物語でなければ書きえなかった地獄に言葉を失う、19年、いちばんの衝撃を受けた百合小説でした。
 
 
2位 生のみ生のままで/綿矢りさ
生のみ生のままで 上

生のみ生のままで 上

 
【あらすじ】彼氏同士が幼なじみだった縁で出会った、携帯ショップの店員・逢衣と、売り出し中の芸能人である彩夏。最悪だった出会い頭の印象から一転し、ふたりは急速に近づき、愛しあう仲になっていく。
 
 いわずとしれた芥川賞作家の綿矢りさ先生の最新作。以前の著作『ひらいて 』には、好きな男の子の彼女を寝取るという衝撃の展開が含まれていましたが、本作は真っ向から女性どうしの恋愛を描いた作品です。
 逢衣と彩夏のふたりの恋は、互いに彼氏がいるという、最初から、波乱含みの展開。無事に関係を築き上げるまでにも、すでにハラハラさせられましたが、それからは、恋の高揚感に酔いしれ、この幸せよ続いてくれと願い、引き裂かれた恋人たちの痛ましさに暗澹としながら、再起を息を詰めるように祈り……と、うかつにふたりに共感してしまうと大変なことになります。
 ふたりが引き裂かれてからの展開は、壮絶の一言に尽きます。彩夏とも気持ちのすれ違ったまま、いつ心が折れてもおかしくない境遇に在っても耐え忍び、愚直にふたりの未来を信じ続け、愛を貫こうとする逢衣の姿に胸を打たれました。
 
1位 アステリズムに花束を/アンソロジー
アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)

アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/06/20
  • メディア: 文庫
 

  ひとまず本書の成立事情を振り返ってみましょう。『不動カリンは一切動ぜず』(2010)『展翅少女人形館』(2011)『ノノノ・ワールドエンド』(2016)、百合姫ノベルから発行された『あまいゆびさき』の文庫版など、散発的に百合要素のある作品が収められてきたハヤカワ文庫JAでは、2017年、宮澤伊織先生の『裏世界ピクニック』シリーズがスタート、2018年には、ラブライブの二次創作から生まれた表題作を含む、草野原々先生の初の単行本『最後にして最初のアイドル』が刊行されました。同年には、SFセミナーでの宮澤先生のインタビューをまとめた記事「百合が俺を人間にしてくれた」が内外で評判となり、機運高まる中、8月には、宮澤・草野両先生を招いたトークショーの席上で、SFマガジンが<百合SF特集>を行うという発表がされます。そして、12月25日発売の<百合SF特集>が組まれたSFマガジン2月号は、予約殺到のため発売前重版、創刊以来の3刷を達成するという事態に至りました。その特集に掲載された4編を含む世界初の百合SFアンソロジーが本書となります。発刊に合わせ、全国書店では百合SFフェアも開催されました。以下、収録作を簡単にご紹介します。

 
宮澤伊織「キミノスケープ」
 人類が消え失せた世界を、ひとり、とり残された「あなた」が旅をするという二人称で書かれた作品。前述の「百合が俺を人間にしてくれた」で披露された“不在の百合”という概念を体現していることに驚かされます。人っ子一人いない風景でさえ百合になるんですね。
森田季節「四十九日恋文」
 四十九日までは死者とメールを通してコンタクトがとれることが発見された時代。ただし、一日一文字づつ交信可能な文字数が少なくなっていくという決まりがある中で、事故死した彼女とのやりとりが描かれます。恋人を喪うという悲劇を描いたものですが、悲壮なばかりではなく、死者とメールするという光景が、日常をちょっとズレた視点から眺めているような効果をもたらし、ふしぎな魅力があります。
今井哲也「ピロウトーク」 
 本書で唯一のコミック作品です。18年間一睡もできない先輩。お気に入りの枕を探す旅に付き合う後輩。SFならではの壮大な設定と、欠けた運命の相手ばかり見つめている先輩に寄せる後輩のほのかな想いを、軽妙に描き出しています。
草野原々「幽世知能」
 対峙する幼なじみの少女ふたり。女どうしの“エモい”感情のやりとりをハードSFで表現するとこうなるのかと思わされました。ラストはある種、究極の百合ともいえそうです。
伴名練「彼岸花
 大正浪漫の香りのする歴史改変SF(吉屋信子先生の著作に親しまれた方ならおなじみかと思いますが、ちゃんと「涙さしぐみ」さえします)。吸血鬼の真祖と最後の人類となった少女。心を通わせていくふたりに、種族の違いがもたらす悲劇を哀切に描き出しています。
南北義隆「月と怪物」
 2018年の11月から翌年1月にかけて、<コミック百合姫>とpixivが共同開催した「百合文芸小説コンテスト」に投じられ、「ソ連百合」として話題になった本作。歴史の波に攫われた秘められた恋を描き、抑制の効いた語り口が、かえって深い感動を呼ぶ作品。
櫻木みわ×麦原遼「海の双翼」
 小説家の女性が、翼を持つ女性と出会い、心を通じ合わせていく様を、小説家をサポートする人形体と呼ばれる存在の視点も交えて、語られます。種族の違うふたりが結ばれていくストーリーも良いですが、ふたりに向けられる人形体の硲の感情が印象的でした。
陸秋槎/稲村文吾訳「色のない緑」
 疎遠になっていた友人の自殺の報を受けたふたりの女性が、過去の記憶を辿り、その死の理由に迫っていく本作。抑制のきいた筆致から滲んでくる喪失の痛みが心に残ります。ラストの残された女性どうし思いあう姿が救いです。
小川一水「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」
 ガス惑星を舞台に、男女一組で行わなければならないとされる宇宙漁に、女ふたりで挑む痛快な作品。性差や社会の仕組みに対する問題意識をのぞかせつつ、軽やかに描かれたとってもキュートなラブコメでもあります。
 
 以上、9編、様々な形で綴られる女性どうしの関係性を描いた作品が、「百合」という概念そのものを揺さぶり、世界の見方を広げてくれることでしょう。これからの「百合」及び「百合SF」の未来への期待に満ちた一冊です。
 

 

 

海外部門

作品名 作者名
こちらマガーク探偵団 E.W. ヒルディック
クローディアの秘密 E・L・カニグズバーグ
マガーク少年探偵団(11)銀行強盗をつかまえろ E・W・ヒルディック
五人と一匹 1 ミルトン屋敷の謎 E・ブライトン
少年弁護士セオの事件簿1なぞの目撃者 J・グリシャム
HATTORI HACHI: THE REVENGE OF PRAYING MANTIS Jane PROWSE
ぼくはめいたんてい1 きえた犬のえ M・W・シャーマット
女には向かない職業 P.D.ジェイムズ
六人の探偵たち アーサー・ランサム
アガサ=クリスティ 推理・探偵小説集[1] アガサ・クリスティ
そして誰もいなくなった アガサ・クリスティ
オリエント急行殺人事件 アガサ・クリスティ
ナターシャ、ぼくを見て! アリク少年の探偵物語 アナトーリ・アレクシン
盲目の目撃者 アルプ・クマル・ダッタ
イカー少年探偵団 消えた名探偵 アンソニー・リード
ベイジルとふたご誘拐事件 イブ・タイタス
かじ屋横丁事件 ヴァーツラフ・ジェザーチ(チェコ
恐怖の黒いカーテン ウィリアム・アイリッシュ
名探偵カマキリと5つの怪事件 ウィリアム・コツウィンクル
ぬすまれた宝物 ウィリアム・スタイグ
名探偵しまうまゲピー ウィリアム・ペン・デュボア
カイウスはばかだ ウィンターフェルト
エーミールと探偵たち エーリヒ・ケストナー
モルグ街の殺人事件 エドガー・アラン・ポー
なぞの038事件 エラリー・クイーン
青い蓮 エルジュ
クラバート オトフリート・プロイスラー
少女探偵ナンシー キャロリン・キーン
ファベルジェの卵 キャロリン・キーン
ふたりのロッテ ケストナー
最後の事件 コナン・ドイル
赤毛組合 コナン・ドイル
おどる人形 コナン・ドイル
まだらの紐 コナン・ドイル
ボグ・チャイルド シヴォーン・ダウド
ある小馬裁判の記 ジェイムズ・オールドリッジ
この湖にボート禁止 ジェフリー・トリーズ
不思議を売る男 ジェラルディン・マコーリアン
青ひげ シャルル・ペロー
クリスティーナの誘拐 ジョーン・ラウリー・ニクソン
ドーヴィルの花売り娘 ジョルジュ・シムノン
少年弁護士セオの事件簿(2) 誘拐ゲーム ジョン・グリシャム
死のロングウォーク スティーブン・キング
サレンダー ソーニャ・ハートネット
小鳥たちが見たもの ソーニャ・ハートネット
ぬすまれたダイヤのなぞ ディビッド・アドラー
少年探偵ブラウン 1 ドナルド・ソボル
コララインとボタンの魔女 ニール・ゲイマン
くろて団は名探偵 ハンス・ユルゲン・プレス
エヴァがめざめるとき ピーター・ディッキンソン(ディキンスン)
カロリーヌはめいたんてい ピエール・プロブスト
ゆうかい犯vs.空手少女 ヒルディック
幽霊探偵団コンコルドに乗る ヒルディック
のろわれた沼の秘密 フィリス・A・ホイットニー
幽霊船から来た少年 ブライアン・ジェイクス
秘密の花園 フランシス・バーネット
大どろぼうホッツェンプロッツ プロイスラー
オルリー空港22時30分 ポール・ベルナ
クロワ・ルス少年探偵団 2 原子力センター爆破計画 ボンゾン
トム・ソーヤーの探偵 マーク・トウェン
スウェーデンこくおうをすくえ! マージョリー・W・シャーマット
ねらわれたゲームソフト―インターネット探偵団 マイケル・コールマン
ネズミの時計屋さん ハーマックスの恋と冒険 1 マイケル・ホーイ
ジョシュア・ファイル 見えない都市 マリア・G・ハリス
モモ ミヒャエル・エンデ
サンタクロースはめいたんてい メアリ・B・クリスチャン
奇岩城(奇巌城) モーリス・ルブラン
怪盗ルパン 813の謎 モーリス・ルブラン
八つの犯罪 モーリス・ルブラン
悪魔のダイヤ モーリス・ルブラン
悪魔の赤い輪 モーリス・ルブラン
三十棺桶島 モーリス・ルブラン
虎の牙 モーリス・ルブラン
名探偵カッレくん リンドグレーン
名探偵カッレとスパイ団 リンドグレーン
ルイス・サッカー
爬虫類の部屋にきた レモニー・スニケット
ザ・ギバー ロイス・ローリー
フィオナの海 ロザリー・K. フライ




































国内部門

作品名 作者名
死者の学園祭 赤川次郎
復讐専用ダイアル 赤川次郎
こちら、団地探偵局 赤川次郎
毒(ポイズン) 赤川次郎
帝都少年探偵団 赤城毅
妖奇城の秘密 芦辺拓
月蝕姫のキス 芦辺拓
謎のジオラマ王国 芦辺拓
びっくり館の殺人 綾辻行人
悪魔博士 鮎川哲也
虹果て村の秘密 有栖川有栖
ロンドン園遊会殺人事件 井上ほのか
愛してるっていわせたい 井上ほのか
謎の金属人間 海野十三
幽鬼の塔 江戸川乱歩
妖怪博士 江戸川乱歩
大金塊 江戸川乱歩
ポワロック氏の事件簿・迷宮のレティーシア 大岩正幸
香水紳士 大阪圭吉
天才探偵Sen 公園七不思議 大崎梢
銃とチョコレート 乙一
くらのかみ 小野不由美
ゴーストハント1 旧校舎怪談(『悪霊がいっぱい!?』) 小野不由美
喪服を着た悪魔 風見潤
酸素は鏡に映らない 上遠野浩平
ぐるぐる猿と歌う鳥 加納朋子
少年科学探偵 暗夜の格闘 小酒井不木
紅色ダイヤ 小酒井不木
ぼく、探偵じゃありません 後藤みわこ
オヨヨ島の冒険 小林信彦
アネモネ探偵団 香港式ミルクティーの謎 近藤史恵
あらしの白鳩 西條八十
魔女の死んだ家 篠田真由美
透明人間の納屋 島田荘司
こちら幻想探偵社 清水義範
怪事件が多すぎる 清水義範
子どもの王様 殊能将之
名探偵チビー 雨あがり美術館の謎 新庄節美
いつのまにか名探偵 杉山亮
そんなわけで名探偵 杉山亮
きょうはなんのひ? 瀬田貞二
ぼくらの七日間戦争 宗田理
闇のなかの赤い馬 竹本健治
髑髏城の花嫁 田中芳樹
仮題・中学殺人事件 辻真先
改訂・受験殺人事件 辻真先
蜃気楼博士 都筑道夫
白い火のゆくえ 天藤真
カーの復讐 二階堂黎人
怪盗グリフィン、絶体絶命 法月綸太郎
神隠島 は×み×か×る
機巧館のかぞえ唄 はやみねかおる
そして五人がいなくなる はやみねかおる
消える総生島 はやみねかおる
魔女の隠れ里 はやみねかおる
都会のトム&ソーヤ はやみねかおる
少年名探偵 虹北恭介の冒険 はやみねかおる
怪盗クイーンの予告状(『いつも心に好奇心!』収録作) はやみねかおる
都会のトム&ソーヤ⑤ In塀戸(上下巻) はやみねかおる
『ミステリーの館』へ、ようこそ はやみねかおる
人形は笑わない はやみねかおる
かいけつゾロリ あついぜ! ラーメン対決 原ゆたか
IQ探偵ムー そして、彼女はやってきた 深沢美潮
IQ探偵ムー 飛ばない!? 移動教室 深沢美潮
さばくの町のXたんてい 別役実
へんな怪獣 星新一
パスワードはひ・み・つ 松原秀
パスワードVS紅カモメ 松原秀
タイタニック・パズル 七つ森探偵団ミステリーツアー〈2〉 松原秀
高校殺人事件(『赤い月』改題) 松本清張
神様ゲーム 麻耶雄嵩
ウルフ探偵 おかしな事件 三田村信行
おとうさんがいっぱい 三田村信行
ウルフ探偵 ぬすまれたタイムマシン事件 三田村信行
時計を忘れて森へいこう 光原百合
バルーバの冒険 片目の黄金獅子 南洋一郎
サボテンの花 宮部みゆき
カラフル 森絵都
漱石先生の事件簿 柳広司
ステーションの奥の奥(『古城駅の奥の奥』) 山口雅也
夜光珠の怪盗 山田風太郎
笑う肉仮面 山田風太郎
怪人くらやみ殿下 山村正夫
少年探偵・春田龍介 山本周五郎
怪獣男爵 横溝正史
黄金の指紋 横溝正史
夜光怪人 横溝正史
迷宮の扉 横溝正史
プラスマイナスゼロ 若竹七海
白い別荘の怪事件 安達征一郎
少年探偵ハヤトとケン5 暗号がいっぱい 安達征一郎
大迷宮 横溝正史
海にしずんだ島 まぼろしの瓜生島伝説 加藤知弘
亡霊島の地下迷宮 関田涙
婚約は事件の幕開け! 久賀理世
黄金魔城 久米元一
夕ばえ作戦 光瀬龍
怪人二十面相 江戸川乱歩
青銅の魔人 江戸川乱歩
怪奇四十面相 江戸川乱歩
三角館の恐怖(リライト版) 江戸川乱歩
少年探偵団 江戸川乱歩
黄金の怪獣 江戸川乱歩
死神博士 高木彬光
白蝋の鬼 高木彬光
少年探偵事件ノート 砂田弘
東京のサンタクロース 砂田弘
少女探偵事件ファイル 砂田弘
地に燃ゆる歌 山岡荘八
ぼくがぼくであること 山中恒
まもなく電車が出現します 似鳥鶏
かぎばあさんは名探偵 手島悠介
ぽっぺん先生の日曜日 舟崎克彦
夏休みだけ探偵団(1)二丁目の犬小屋盗難事件 新庄節美
探偵伯爵と僕 森博嗣
消えたおじさん 仁木悦子
子どもたちの長い放課後 仁木悦子
ミルナの座敷 須知徳平
もしかしたら名探偵 杉山亮
ぼくら三人にせ金づくり 赤木由子
ふつうの学校2 ブラジャー盗難事件の巻 蘇部健一
黄金蝶ひとり 太田忠司
月光亭事件 太田忠司
甘栗と戦車とシロノワール 太田忠司
チョコレート戦争 大石真
どんなかんじかなあ 中山千夏和田誠
ワカンネークエス中松まるは
たんたのたんてい 中川李枝子
まぼろし令嬢 島田一男
浪花少年探偵団 東野圭吾
ドラえもん のび太の魔界大冒険 藤子・F・不二雄
「賢者の石」(『怪盗ファントム&ダークネスEX-GP2』所収) 藤野恵美
ズッコケ三人組対怪盗X 那須正幹
ズッコケ(秘)大作戦 那須正幹
ズッコケ怪盗X最後の戦い 那須正幹
謎のズッコケ海賊島 那須正幹
あやうしズッコケ探検隊 那須正幹
「六年目のクラス会」(異題「約束」『六年目のクラス会』所収) 那須正幹
ズッコケ三人組の未来報告 那須正幹
ぼくらはズッコケ探偵団 那須正幹
お江戸の百太郎 乙松、宙に舞う 那須正幹
怪盗まだら仮面―コロッケ探偵団 那須正幹
ズッコケ三人組のミステリーツアー 那須正幹
ズッコケTV本番中 那須正幹
1234567 那須正幹
人類のあけぼの号 内田庶
洞窟の魔人 南洋一郎
動機なき殺人者たちー帝都〈少年少女〉探偵団ノート 楠木誠一郎
霧のむこうのふしぎな町 柏葉幸子
ざ・ちぇんじ! 氷室冴子
ムジナ探偵局 富安陽子
ムジナ探偵局7 完璧な双子 富安陽子
黒バラの怪人 武田武彦
クレヨン王国 12 妖怪の結婚式 福永令三
ラベンダーが見ていた 麻城ゆう
六一八の秘密 野村胡堂
大宝窟 野村胡堂
まぼろしの大誘かい事件 矢張雄太郎
7人の容疑者 矢張雄太郎
幸せな家族 そしてその頃はやった唄 鈴木悦夫
幸せな家族 鈴木悦夫

ATB児童書ミステリ 途中経過

現在、投票募集中のオールタイムベスト児童書ミステリのいままでに投票があった作品の一覧です。
12月いっぱいまで投票受け付けますので、これから投票したい、投票した内容を見直したいという方は、ぜひ参考になさってください。
投票要項は左記のURLでご確認ください。http://togetter.com/li/736389

全投票結果

ランキングからは漏れましたが、投票のあった全作品を公開。
ポイント別に分け、「作品名/作者名」を表記しました。


・6.5ポイント/2票

ちーちゃんは悠久の向こう日日日
二年四組 交換日記/朝田雅康
・6ポイント/1票
Dear3 2人で見つめる土曜/新井輝
GOSICKs ? 夏から遠ざかる列車/桜庭一樹
ねらわれた街 テレパシー少女「蘭」事件ノート/あさのあつこ
ペイルライダー/江波光則
ラスト・ビジョン/海羽超史郎
機龍警察/月村了衛
昨日も彼女は恋してた・明日も彼女は恋をする/入間人間
・5.5ポイント/1票
“文学少女”と繋がれた愚者野村美月
“文学少女”と神に臨む作家野村美月
“文学少女”と慟哭の巡礼者野村美月
「DRDR」 円居挽
「おいしいココアの作り方」米澤穂信
キリノ津原泰水
「しあわせは子猫のかたち」(『失踪HOLIDAY』所収)/乙一
「脂肪遊戯」/桜庭一樹
「階段」(『青に捧げる悪夢』所収)/乙一
「時雨鬼」宮部みゆき
「少女架刑」吉村昭
「青条の蘭(『十二国記 丕緒の鳥』より)」/小野不由美
「踊り場の花子」辻村深月
「龍の遺跡と黄金の夏」/三雲岳斗(早川→本格ミステリベスト01→文庫アンソロ)
『アリス・ミラー城』殺人事件/北山猛邦
『ギロチン城』殺人事件/北山猛邦
『クロック城』殺人事件/北山猛邦
1/2の騎士/初野晴
12月の銃と少女―BAD×BUDDY/吉田茄矢
1999年のゲームキッズ/渡辺浩弐
B.A.D. 7 繭墨は人形の悲しみをかえりみない/ 綾里けいし
B.A.D.1 繭墨は今日もチョコレートを食べる/綾里けいし
B.A.D.6 繭墨はいつまでも退屈に眠る/綾里けいし
Dクラッカーズ/あざの耕平
H.O.P.E.?/一条理希
JORGEJOESTAR/舞城王太郎
Mr.サイレント 仮想世界の優しい奇跡/早見裕司
R&R/静月遠火
R.I.P. レスト・イン・ピース/杉山幌
STEINS;GATE 円環連鎖のウロボロス (1)(2)/海羽超史郎
θ/籐真千歳
アイドルは名探偵/井上ほのか
アイドルは名探偵2/井上ほのか
アイドルは名探偵4/井上ほのか
アイドルは名探偵5/井上ほのか
アイドルは名探偵6/井上ほのか
アザゼルの鎖/梅津裕一
あなたに恋色ミステリー黒須まりや
アリバイ・ジ・アンビバレンス/西澤保彦
アルキメデスは手を汚さない/小峰元
ある日、爆弾がおちてきて古橋秀之
いわゆる天使の文化祭/似鳥鶏
インシテミル米澤穂信
ヴィーナスの命題/真木武志
えびてん 綺譚奇譚/すかぢ
おねがいツインズ(1,2)/雑波業
キャットフード/森川智喜
キャラねっと―愛$探偵の事件簿/清涼院流水
キョウカンカク 美しき夜に/天祢 涼
クールキャンデー/若竹七海
クレィドゥ・ザ・スカイ 森博嗣
こうして彼は屋上を燃やすことにしたカミツキレイニー
この中に1人、妹がいる!3/田口一
この中に1人、妹がいる! 7/田口一
この中に1人、妹がいる!8/田口一
サイケデリックレスキュー/一条理希
サイコロジカル(上) 兎吊木垓輔の戯言殺し・サイコロジカル(下) 曳かれ者の小唄/西尾維新
さみしさの周波数/乙一
スプライトシュピーゲル4/オイレンシュピーゲル4/冲方丁
スレイヤーズ神坂一
スワロウテイル/藤真千歳
ソウルドロップの幽体研究上遠野浩平
ダイニング・メッセージ/愛川晶
ただし少女はレベル99/汀こるもの
ダブルバインド英田サキ
つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない/河野裕
ともだち同盟/森田季節
トリック・ソルヴァーズ 三人の道化師/夏寿司
トリックスターズC/久住四季
トリックスターズL /久住四季
トリックスターズM/久住四季
なぞの転校生眉村卓
ねらわれた学園眉村卓
ねこたま小林めぐみ
ネットワークフォックスハンティング/一条理希
ネメシスの虐笑/小森健太朗
ハーモニー/伊藤計劃
はい、こちら探偵部です/似鳥航一
ばけらの/杉井光
パラダイス・クローズド THANATOS/汀こるもの
バンドネオンの豹/高橋克彦
「ピコーン!」舞城王太郎
ピジョン・ブラッド(影の王国シリーズ) /榎木洋子
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~/三上延
ブラックナイトと薔薇の棘/田村登正
リザード・バケーション (トライアングル・ディテクティブ)/鴉紋洋
ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会/青柳碧人
ボトルネック米澤穂信
ポワロック氏の事件簿 まぼろしロッセリーニ鉄道/大岩正幸
マツリカ・マハリタ/相沢沙呼
マリオネット症候群/乾くるみ
まりしてん裎千代姫/山本兼一
マルドゥック・フラグメンツ/冲方丁
ミッションスクール/田中哲弥
ムシウタ 01 夢みる蛍/岩井恭平
メグとセロンIV エアコ村連続殺人事件/時雨沢恵一
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2/渡航
ヤングガン・カルナバル深見真
ラグナロク洞/霧舎巧
リリカルタロット占い 殺人予告/夢乃愛子
ルー=ガルー/京極夏彦
ルートダブル Before Crime * After Days/月島総記
ベリオン三雲岳斗
ワイヤレスハートチャイルド/三雲岳斗
愛探偵事務所の事件簿/愁堂れな
異次元失踪/福島正実
「井戸の底」(『吉屋信子集 生霊―文豪怪談傑作選』収録)/吉屋信子
雨の恐竜/山田正紀
嘘つきは姫君のはじまり 秘密の乳姉妹松田志乃ぶ
英国マザーグース物語 哀しみのロイヤル・ウエディング/久賀理世
英国マザーグース物語 花咲ける君と永久の歌/久賀理世
英国マザーグース物語 裏切りの貴公子/久賀理世
英国妖異談12 水晶球を抱く女/篠原美季
演奏しない軽音部と4枚のCD/高木敦史
「猿は猿を殺さない」(『iKILL』所収)/渡辺浩弐
黄昏色の詠使い(2) 奏でる少女の道行きは/細音啓
河原町ルヴォワール/円居挽
牙王城の殺劇/霞流一
怪獣男爵/横溝正史
怪談と踊ろう、そしてあなたは階段で踊る/竜騎士07
海底密室/三雲岳斗
学校を出よう! Escape from The School /谷川流
楽聖少女杉井光
贋作遊戯/赤城毅
虐殺器官伊藤計劃
丘ルトロジック2 江西陀梔のアウラ耳目口司
丘ルトロジック3  女郎花萩のオラトリオ/耳目口司
「玉野五十鈴の誉れ」(『儚い羊たちの祝宴』所収)/米澤穂信
金の瞳の女神 ルーク&レイリア/葉山透
銀河英雄伝説外伝4 螺旋迷宮/田中芳樹
君が僕を 4/中里十
君の嘘、伝説の君/清水マリコ
刑事暗殺/秋口ぎぐる
荊姫(ハイスクール・オーラバスター)/若木未生
血まみれ学園とショートケーキ・プリンセス/真行寺のぞみ
月見月理解の探偵殺人5/明月千里
姑獲鳥の夏京極夏彦
虎と月/柳広司
午前零時のサンドリヨン相沢沙呼
今出川ルヴォワール/円居挽
痕跡師の憂鬱/田代裕彦
罪色の環―リジャッジメント―/仁科裕貴
殺意は青列車が乗せて/柄刀一
殺意は必ず三度ある/東川篤哉
殺人よ、こんにちは/赤川次郎
三匹のおっさん/有川浩
残酷号事件上遠野浩平
子ひつじは迷わない 騒ぐひつじが5ひき/玩具堂
死にたがり姫事件譚 -黒猫に捧げる愛の話-/宮野美嘉
死者は弁明せず/山本弘
時間商人/水市恵
時計館の殺人綾辻行人
七花、時跳び! Time-Travel at the After School /久住四季
七月は織姫と彦星の交換殺人/霧舎巧
七不思議の作り方/佐竹彬
失恋探偵ももせ/岬鷺宮
実況中死/西澤保彦
修羅場な俺と乙女禁漁区1/田代裕彦
終物語(上)/西尾維新
十八時の音楽浴 漆黒のアネット/ゆずはらとしゆき
春期限定いちごタルト事件米澤穂信
恋物語森村誠一
小説仮面ライダーW/三条陸
小説家の作り方/野崎まど
少女キネマ/一肇
少年探偵/小酒井不木
消えた十二支の謎 (ミルキーピア物語)/東野司
消閑の挑戦者(3)/岩井恭平
笑う肉仮面/山田風太郎
食卓にビールを1/小林めぐみ
新本格魔法少女りすか1/西尾維新
神様のメモ帳3/杉井光
人形はこたつで推理する/我孫子武丸
人食い鬼モーリス/松尾由美
人類のあけぼの号/内田庶
生徒会探偵キリカ(3)/杉井光
青春探偵団/山田風太郎
青年のための読書クラブ桜庭一樹
絶対可憐チルドレンTHENOVELS B.A.B.E.L崩壊/三雲岳人
探偵儀式 THE NOVEL メフィスト症事件/清涼院流水大塚英志箸井地図
探偵小説のためのゴシック「火剋金」/古野まほろ 
廃線上のアリア」(『ファウスト』Vol.4、2004年11月)/北山猛邦
男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。?:? -Time to Play-〈上〉〈下〉 /時雨沢恵一
宙/太田忠司
長崎異人館幽霊事件/風見潤
帝都探偵物語赤城毅
天才探偵SEN オルゴール屋敷の罠/大崎梢
天帝のつかわせる御矢/古野まほろ
電波的な彼女〜幸福ゲーム〜 片山憲太郎
東京S黄尾探偵団/響野夏菜
盗作・高校殺人事件辻真先
透明人間の納屋/島田荘司
猫丸先輩の空論/倉知淳
猫丸先輩の推測/倉知淳
破小路ねると堕天列車事件/木戸実験
這いよれ! ニャル子さん 9/逢空万太
白い別荘の怪事件/安達征一郎
白奈さん、おいしくいただいちゃいます2/似鳥航一
八月は一夜限りの心霊探偵/霧舎巧
晩夏/図子慧
浜村渚の計算ノート 2さつめ 不思議の国の期末テスト/青柳碧人
付喪堂骨董店7/御堂彰彦
腐敗の王/在原竹広
舞面真面とお面の女/野崎まど
風に乗りて歩むもの/原田宇陀児
魔王殺しと偽りの勇1・2/田代裕彦
万能鑑定士Qの事件簿 ?(4)/松岡圭祐
万能鑑定士Qの事件簿 ?(7)/松岡圭祐
万能鑑定士Qの事件簿?(6)/松岡圭祐
無貌伝〜綺譚会の惨劇〜/望月守宮
名前探しの放課後/辻村深月
名探偵Z―不可能推理/芦辺拓
名探偵は千秋楽に謎を解く/戸松淳矩
明智少年のこじつけ1/道端さっと
明智少年のこじつけ2/道端さっと
明智少年のこじつけ3/道端さっと
明日の夜明け/時無ゆたか
明日への追跡光瀬龍
夜宵/柴村仁
夜波の鳴く夏/堀井拓馬
勇者と探偵のゲーム/大樹連司
幽式/一筆
匣庭の偶殺魔/北乃坂 柾雪
平井骸惚此中ニ有リ 其貳/田代裕彦
・5ポイント/1票
アルファベット荘事件/北山猛邦
さよならトロイメライ壱乗寺かるた
ズッコケ中年三人組age43/那須正幹
ぼくと魔女式アポカリプス/水瀬葉月
僕の殺人/太田忠司
マージナル/神崎紫電
ローウェル骨董店の事件簿/椹野道流
白の断章/鏡征爾
・4ポイント/1票
SHI-NO ―シノ―/上月雨音
キミとは致命的なズレがある/赤月 カケヤ
タクティカル・ジャッジメント師走トオル
ぼくと先輩のマジカル・ライフ/はやみねかおる
リバースブラッド?/一柳凪
空想オルガン/初野晴
三姉妹探偵団赤川次郎
出世花/高田郁
名探偵に薔薇を/城平京
夜の光/坂木司
・3ポイント/1票
孤島症候群谷川流(『涼宮ハルヒの退屈』収録)/谷川流
学園カゲキ!山川進
吸血鬼はお年頃/赤川次郎
三辺は祝祭的色彩/佐竹彬
七つの海を照らす星/七河迦南
少女禁区/伴名練
双子と幼なじみの四人殺し/森田陽一
東雲侑子は短編小説をあいしている森橋ビンゴ
夜光怪人/横溝正史
葉桜/橋本紡
緑の我が家/小野不由美
・2ポイント/1票
MONSTER DAYS/扇友太
おれは非情勤/東野圭吾
キノの旅時雨沢恵一
夏の魔術田中芳樹
死神博士高木彬光
狩野俊介の事件簿/太田忠司
首の姫と首なし騎士/睦月けい
秋の花/北村薫
赤石沢教室の実験/田代裕彦
野粼まど劇場/野粼まど
・1ポイント/1票
カラフル/森絵都
ざ・ちぇんじ/氷室冴子
サクラダリセット2/河野裕
でかい月だな/水森サトリ
パノラマ館の惨劇/赤城毅
ボカロ界のヒミツの事件譜3 名探偵エレGYちゃん様の謎解きごっこ/泉 和良
またたかない星/小泉喜美子
四月は霧の00(ラブラブ)密室/霧舎巧
少女不十分/西尾維新
神のみぞ知るセカイ ―神と悪魔と天使/有沢まみず
蒼海ガールズ!3/白鳥士郎
閉鎖のシステム/秋田禎信
夢にも思わない/宮部みゆき

ライトノベル・少女小説から選ぶオールタイムベストミステリ結果:作品別

過日、投票を募集した「ライトノベル少女小説から選ぶオールタイムベストミステリ」の結果です。
togetterでまとめたものに、結果集計ミスによる順位の間違いに訂正を施しました。
表記について
【順位(ポイント/得票数)】作品名/作者名
の順で示してあります。

【第1位(109.0pt/21)】[映]アムリタ/野崎まど
【第2位(97.5pt/18)】 六花の勇者 1/山形石雄
【第3位(86.0pt/15)】 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet/桜庭一樹
【第4位(85.5pt/15)】 丸太町ルヴォワール/円居挽
【第5位(84.0pt/16)】 夏期限定トロピカルパフェ事件米澤穂信
【第6位(81.5pt/14)】 GOTH/乙一
【第7位(78.5pt/13)】 トリックスターズD/久住四季
【第8位(77.5pt/13)】 タイム・リープ あしたはきのう/高畑京一郎
【第9位(75.5pt/11)】 2/野崎まど
【第10位(68.0pt/11)】愚者のエンドロール米澤穂信
【第11位(65.0pt/12)】インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI/米倉あきら
【第12位(62.0pt/9)】 Another/綾辻行人
【第13位(61.5pt/10)】氷菓米澤穂信
【第14位(61.0pt/11)】クドリャフカの順番米澤穂信
【第15位(59.5pt/9)】 クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣/ 西尾維新
【第16位(57.0pt/10)】小説スパイラル〜推理の絆〜<2>鋼鉄番長の密室/城平京
【第17位(49.5pt/9)】 クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識/西尾維新
【第18位(49.0pt/8)】 さよなら妖精米澤穂信
【第18位(49.0pt/8)】 シナオシ/田代裕彦
【第20位(47.5pt/10)】“文学少女”と死にたがりの道化【ピエロ】/野村美月
【第21位(46.0pt/8)】 “菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕/高木敦史
【第21位(46.0pt/9)】 夏と花火と私の死体/乙一
【第21位(46.0pt/7)】 麗しのシャーロットに捧ぐ ヴァーテックテイルズ/尾関修一
【第24位(45.5pt/8)】 子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき/玩具堂
【第25位(44.0pt/8)】 スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ/森川智喜
【第25位(44.0pt/8)】 涼宮ハルヒの消失谷川流
【第27位(41.5pt/7)】 神様ゲーム麻耶雄嵩
【第27位(41.5pt/7)】 幽霊には微笑みを、生者には花束を/飛田甲
【第29位(40.5pt/7)】 平井骸惚此中ニ有リ其四/田代裕彦
【第30位(38.5pt/7)】 ダンガンロンパ霧切2/北山猛邦
【第31位(37pt/6)】 少年名探偵 虹北恭介の冒険/はやみねかおる
【第32位(36.0pt/7)】 失踪HOLIDAY/乙一
【第32位(36.0pt/7)】 赤村崎葵子の分析はデタラメ/十階堂一系
【第34位(35.0pt/8)】 死なない生徒殺人事件/野崎まど
【第35位(33.0pt/5)】 悪魔のミカタ 魔法カメラ/うえお久光
【第36位(31.0pt/6)】 魔女狩り探偵春夏秋冬セツナ/赤月黎
【第37位(30.5pt/5)】 トリックスターズ久住四季
【第38位(29.5pt/6)】 ハムレット・シンドローム樺山三英
【第39位(28.5pt/5)】 しずるさんと偏屈な死者たち The Eccentric Dead In White Sickroom/上遠野浩平
【第39位(28.5pt/5)】 GOSICK IV-ゴシック-愚者を代弁せよ/桜庭一樹
【第41位(27.5pt/4)】 虚構推理 鋼人七瀬/城平京
【第41位(27.5pt/5)】 白い花の舞い散る時間友桐夏
【第43位(27.0pt/5)】 神戯/神世希
【第43位(27.0pt/6)】 殺竜事件上遠野浩平
【第45位(25.5pt/4)】 みすてぃっく・あい/一柳凪
【第45位(25.5pt/4)】 月光/間宮夏生
【第47位(24.5pt/6)】 きみとぼくの壊れた世界西尾維新
【第48位(24.0pt/4)】 仮題・中学殺人事件/辻真先
【第49位(23.5pt/3)】 まもなく電車が出現します/似鳥鶏
【第49位(23.5pt/5)】 キリサキ/田代裕彦
【第51位(22.5pt/5)】 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸/入間人間
【第51位(22.5pt/4)】 鷲見ヶ原うぐいすの論証久住四季
【第53位(22.0pt/4)】 遠まわりする雛米澤穂信
【第53位(22.0pt/4)】 アイドルは名探偵3 愛してるっていわせたい/井上ほのか
【第53位(22.0pt/4)】 月見月理解の探偵殺人明月千里
【第56位(21.5pt/4)】 学校を出よう! 2 I‐My‐Me/谷川流
【第57位(21.0pt/3)】 さよならの次にくる<新学期編><卒業式編> /似鳥鶏
【第57位(21.0pt/3)】 神様のメモ帳1/杉井光
【第59位(20.0pt/3)】 ブギーポップは笑わない
【第60位(19.5pt/4)】 アクアリウムの夜/ 稲生平太郎
【第61位(19.0pt/3)】 嘘つきパズル/黒田研二
【第61位(19.0pt/4)】 ルピナス探偵団の当惑/津原泰水
【第61位(19.0pt/3)】 空ろの箱と零のマリア 3・4/御影瑛路
【第61位(19.0pt/5)】 天使が開けた密室谷原秋桜子
【第65位(18.5pt/3)】 GOSICK-ゴシック-/桜庭一樹
【第65位(18.5pt/3)】 少女ノイズ/三雲岳斗
【第67位(18.0pt/3)】 空ろの箱と零のマリア御影瑛路
【第67位(18.0pt/4)】 鏡の迷宮、白い蝶/谷原秋桜子
【第67位(18.0pt/4)】 煌夜祭多崎礼
【第67位(18.0pt/4)】 戦う少女と残酷な少年―ブロークン・フィスト/深見真
【第67位(18.0pt/2)】 蜃気楼博士都筑道夫
【第67位(18.0pt/4)】 平井骸惚此中ニ有リ/田代裕彦
【第73位(17.5pt/4)】 理由(わけ)あって冬に出る/似鳥鶏
【第73位(17.5pt/3)】 ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち/三上延
【第75位(17.0pt/3)】 退出ゲーム/初野晴
【第75位(17.0pt/4)】 小説スパイラル<4>幸福の終わり、終わりの幸福/城平京
【第77位(16.5pt/3)】 パーフェクトフレンド/野崎まど
【第77位(16.5pt/3)】 すべての愛がゆるされる島/杉井光
【第77位(16.5pt/3)】 サクラダリセット1 CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY/河野裕
【第77位(16.5pt/3)】 秋期限定栗きんとん事件米澤穂信
【第77位(16.5pt/3)】 電脳山荘殺人事件/天樹征丸
【第77位(16.5pt/3)】 倒立する塔の殺人/皆川博子
【第77位(16.5pt/3)】 虹果て村の秘密/有栖川有栖
【第84位(16.0pt/4)】 怪人二十面相江戸川乱歩
【第84位(16.0pt/3)】 怪盗グリフィン、絶体絶命/法月綸太郎
【第86位(15.5pt/2)】 そして五人がいなくなる/ はやみねかおる
【第86位(15.5pt/2)】 「おじいさんと一緒」(『マリア様がみてる 真夏の一ページ』収録)
【第88位(14.0pt/2)】 TVアニメ殺人事件/辻真先
【第88位(14.0pt/2)】 空の境界奈須きのこ
【第88位(14.0pt/2)】 月光亭事件/大田忠司
【第88位(14.0pt/3)】 天帝のはしたなき果実/古野まほろ
【第88位(14.0pt/3)】 本格推理委員会/日向まさみち
【第93位(13.5pt/2)】 六番目の小夜子恩田陸
【第93位(13.5pt/2)】 M.G.H 楽園の鏡像/三雲岳斗
【第93位(13.5pt/2)】 小説スパイラル〜推理の絆〜<1>ソードマスターの犯罪/城平京
【第93位(13.5pt/2)】 赤村崎葵子の分析はデタラメ 続/十階堂一系
【第97位(13.0pt/3)】 “菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人/高木敦史
【第97位(13.0pt/3)】 Classic Fantasy Within 第八話 ハロゥウィン・ダンサー/島田荘司
【第99位(12.5pt/3)】 編集長☆一直線!(涼宮ハルヒの憤慨所収)/谷川流
【第99位(12.5pt/3)】 僕らはどこにも開かない/御影瑛路
【第99位(12.5pt/3)】 紫骸城事件上遠野浩平
【第99位(12.5pt/3)】 初恋彗星/綾崎隼
【第99位(12.5pt/3)】探偵・花咲太郎は閃かない/入間人間
【第99位(12.5pt/3)】神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック/大迫純一
【第105位(12.0pt/3)】ブギーポップ イン・ザ・ミラー「パンドラ」/上遠野浩平
【第105位(12.0pt/3)】銃とチョコレート/乙一
【第105位(12.0pt/2)】電波的な彼女
【第110位(11.5pt/2)】DEAR1 少女がくれた木曜日/新井輝
【第110位(11.5pt/3)】“文学少女”と月花を抱く水妖【ウンディーネ】/野村美月
【第110位(11.5pt/2)】SHI-NO 過去からの挑戦状/君の笑顔/上月雨音
【第110位(11.5pt/2)】しずるさんと底無し密室たち/上遠野浩平
【第110位(11.5pt/2)】死者の学園祭/赤川次郎
【第110位(11.5pt/2)】折れた竜骨/米澤穂信
【第116位(11.0pt/2)】ビブリア古書堂の事件手帖2〜栞子さんと謎めく日常〜/三上延
【第116位(11.0pt/2)】プシュケの涙/柴村仁
【第116位(11.0pt/2)】ほうかご探偵隊/倉知淳
【第116位(11.0pt/2)】アリス・イン・ゴシックランド−霧の都の大海賊−南房秀久
【第116位(11.0pt/2)】“文学少女”と飢え渇く幽霊野村美月
【第116位(11.0pt/2)】スチームオペラ/芦辺拓
【第116位(11.0pt/2)】合本・青春殺人事件/辻真先
【第116位(11.0pt/2)】骨喰島/藤原京
【第116位(11.0pt/2)】左巻キ式ラストリゾート/海猫沢めろん
【第116位(11.0pt/2)】子ひつじは迷わない玩具堂
【第116位(11.0pt/2)】子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき/玩具堂
【第116位(11.0pt/2)】失恋探偵ももせ3/岬鷺宮
【第116位(11.0pt/2)】ライトジーンの遺産神林長平
【第116位(11.0pt/2)】悪夢の棲む家/小野不由美
【第116位(11.0pt/2)】嘘月/杉山幌
【第116位(11.0pt/2)】英国マザーグース物語―婚約は事件の幕開け!
【第116位(11.0pt/2)】神さまのいない日曜/入江君人
【第116位(11.0pt/2)】星を撃ち落とす/友桐夏
【第116位(11.0pt/2)】千年ジュリエット/初野晴
【第116位(11.0pt/2)】体育館の殺人/青崎有吾
【第116位(11.0pt/2)】少女には向かない職業桜庭一樹
【第116位(11.0pt/2)】鳥葬 -まだ人間じゃない-/江波光則
【第116位(11.0pt/2)】都会のトム&ソーヤ (2) 乱! RUN! ラン! /はやみねかおる
【第116位(11.0pt/2)】猫の尻尾も借りてきて/久米康之
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【第116位(11.0pt/2)】幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ/木ノ歌詠瑞智士記
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【第150位(10.0pt/1)】エイリアン京洛異妖篇/菊地秀行
【第150位(10.0pt/1)】マルドゥック・ヴェロシティ冲方丁
【第150位(10.0pt/1)】闇の喇叭/有栖川有栖
【第150位(10.0pt/1)】丘ルトロジック耳目口司
【第150位(10.0pt/1)】空とタマ/鈴木大輔
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【第161位(9.5pt/2)】 エナメルを塗った魂の比重佐藤友哉
【第161位(9.5pt/2)】 探偵失格 愛ト謂ウ病悪ノ罹患、故ニ我々ハ人ヲ殺/中維
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【第167位(9.0pt/2)】 ビブリア古書堂の事件手帖5 〜栞子さんと繋がりの時〜/三上延
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【第190位(7.5pt/2)】 密葬 わたしを離さないで/江波光則
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